DATE 2020.07.31

そんなふう 67

時々、娘が「あのね、まえね、おにいさんだったときにね、〇〇したの、〇〇に行ったの」、と、話し始めるときがある。先月それが頻繁にあったので、「おにいさんだったときは誰がお母さんだったの?」と聞くと「わか」と言う。わかさんは夫の姉だ。夫の実家は4人きょうだいが皆名前で呼び合うので、それに倣って娘も名前で呼ぶ。普段離れて暮らしているし、わかさんのことが話題にのぼることが多いわけではないのだが、すっと義姉の名前が出たので驚いた。

 

数日後、またおにいさんだったときにね、と話し出したので、「そのときは誰がお母さんだったんだっけ?」とまた聞くと、「わか」と言ってから、「わかのおかあさん」、と言い直した。「わかのおかあさんは、ババだよ」、と言うと、「そう、ババがおかあさん、それでわかがおねえさんで、もうひとりいたの」誰?と聞くと「おとうさん、わかの、死んだ、前生きてたおとうさん」、「じゃあジジのこと?天草のジジがおとうさんだったの?」と聞いたら、うんと言ってうなずいた。そのときは男の子だったの?と聞くと、そう、その次おねえさんになって、またあかちゃんに戻ってそして、〇〇ちゃん(娘のなまえ)になったの、と言うので妙にリアリティがあった。何度か転生を繰り返すたびに、わかさんが娘の母であったり、姉であったり、祖父母が両親になったりしたということで、随分身近な人たちばかりで、娘が適当に言っているような気もするが、細かいところが辻褄もあっていてなんとなく信憑性がある。ちょうどその話をした日が義母の誕生日だったりしたのも面白い偶然だった。

 

輪廻ってほんとうにあるのかもしれない、と思うとまた来世で死んだ祖父にも会えるような気がした。

BACKNUMBER 川内倫子 そんなふう
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