DATE 2021.05.17

運動嫌い、足が遅い、失敗続きでもOK! 子どもとスポーツの悩みQ&A

近年、子どもの運動能力の低下が問題視されている。さらにコロナ禍で運動の機会は一層減少し、「運動嫌いに悩んでいる」という親も多いだろう。子どもの運動能力を育てるために親ができることは何だろうか?今回子どもと運動のより良い関係性について、ミズノに話を聞いた。

【SPECIAL FEATURE】みんなの体育2021

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令和の子どもたちは本当に運動能力が低い?

スポーツ庁が行う「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」では、小学生の運動能力が低下し、以前に比べて肥満児が多いという結果が出ている。ゲームなどのスクリーンタイムの増加や朝食を食べない家庭の増加など、子どもの運動能力の低下にはさまざまな要因が挙げられているが、コロナ禍で推奨されるステイホームにより、子どもたちはさらにのびのびと体を動かし、自由に外で遊ぶことが難しくなっている。

 

スポーツメーカーのミズノは、子どもたちに体を動かす楽しさを教えるために、遊びを通じた運動をメイン活動として行うスポーツ学童「あそりーと」を、2018年より運営。この「あそりーと」で、普段から子どもたちと接しているプレイリーダー*の松岡遥介さんは、最近の子どもたちの運動能力について、次のように分析する。

 

*子どもたちに運動の楽しさを教える、ミズノ独自の「運動あそび」のエキスパート

 

「いまの子どもたちはゲームやYouTubeで楽しく遊べてしまうので、運動をする機会が少なく、苦手になり、運動を嫌いになってしまう子がいます。一方でご家庭の方針で、積極的にスポーツに取り組む子もいます。スポーツが得意で好きな子と、苦手で嫌いになってしまう子、という二極化が進んでいる状況です。

運動が好きな子どもたちは、種目に特化したスキル的な部分は伸びていると思います。例えばサッカーは、足元の技術やリフティングなど、昔の子どもたちに比べると現代の子どものほうがはるかに上手ですね」

 

運動が得意な子はどんどん伸びるし、そうでない子は運動を嫌いになってしまう。親としては、できれば我が子にはスポーツに対して苦手意識を持って欲しくないと願う人が多いだろう。では、どうすれば子どもが自ら運動を好きになる環境を作ってあげられるのだろうか?

今回お話を伺った、ミズノ プレイリーダーの松岡遥介さん。幼少期からサッカーや陸上をやっていたアスリートで、プライベートでは一児の父の顔も持つ。
今回お話を伺った、ミズノ プレイリーダーの松岡遥介さん。幼少期からサッカーや陸上をやっていたアスリートで、プライベートでは一児の父の顔も持つ。

子どもたちの「スポーツをやりたい!」を伸ばすために

我が子に運動を好きになってもらうために、まずはさまざまなスポーツを体験させてあげようと考える親も多いだろう。しかし環境を整える上で、親が気をつけなければならないことがあると松岡さんは言う。

 

「お子さん自身が本当に『やりたいこと』なのかを考えることが大事です。親に言われて習いごとをしても、実際に体を動かすのはお子さん自身です。本人が面白くて、心地よさを感じないと長続きしなかったり、運動にネガティブなイメージを持つことになってしまいます」

 

では、子どもの“やりたいこと”を知るにはどうしたら良いのだろうか?

 

「大事なのは、子どもをよく観察すること。『あそりーと』でも、いくら私たちが考えて『これなら子どもが喜ぶはず!』とプログラムを組み立てても、実際に子どもたちが遊んでみないと本当に楽しんでいるのか、何に興味をもつのかは分かりません。ボール遊びが得意なのか、走って鬼ごっこするのが好きなのか、人それぞれ。直接声をかけて聞くよりもじっくり観察してあげる方が、子どもの本当にやりたりたいことを知るには近道になります」

 

最初から習い事などのたくさんの選択肢を与えるよりも、まずは公園遊びといった日常の中でじっくりと我が子を観察すること。子どもが何に興味を持ち、何が得意かを見極めることで、子どもが本当にやりたい運動に気づき、「好き」という気持ちを大切にできるはずだ。

スポーツ学童『あそりーと』に通う子ども達だけが利用できる、芝生エリア。ここで日々、鬼ごっこやドッチボールなどさまざまな運動を遊びながら取り組んでいる。
スポーツ学童『あそりーと』に通う子ども達だけが利用できる、芝生エリア。ここで日々、鬼ごっこやドッチボールなどさまざまな運動を遊びながら取り組んでいる。

運動はいつから始めたらいい?

運動好きになってもらうためには、実際には何歳くらいから体を動かすのがベストなのだろうか。ミズノでは3〜11歳くらいの時期を、運動能力がグンと伸びるゴールデンエイジと定め、特に3〜6歳までの間に運動をはじめ、この期間にさまざまな動きを体験することが重要だと提言している。なぜなら、脳からの信号が脊髄を通り、筋肉に伝達し、手足を動かすのが運動の仕組み。その神経系は、3〜6歳までに90%ほど完成するからだ。

また、0〜2歳までは、生まれつきできる基礎的な運動をする時期で、3歳以降はいろいろな運動ができる時期。よって3歳以降から、少しずつ身体を動かしはじめるのがおすすめと言う訳である。

 

「神経系が出来上がる3〜6歳の間ににできるだけ多様な動きを経験することが、11歳以降、自分の好きなスポーツに少しずつチャレンジしていくときの基礎になります。 お子さんが運動嫌いになる要因は『うまく自分の体を動かせない』という理由がほとんど。ミズノでは3〜6歳の時期に、運動の基礎となる“36の動き”を遊びながら行うことを提唱しています」

 

また松岡さんは、親が「運動ができる子どもに育ってほしい」と高い期待をかけることが、幼い子どもにとって心理的負担になり、結果運動嫌いになってしまう危険性があると指摘する。

 

「親の気持ちが強いと、遊びではなくて指導に近くなってきてしまい、子どもが運動を『強制される嫌なこと』と捉えてしまう危険性もあります。本来、子どもたちは『場』さえあれば自然と遊び、体を動かすものです。まずは体を動かす楽しさを知ってもらいたい、と思っているのならば、最初のうちはただ子どもに遊びの『場』を用意する、ということだけでも十分効果的だと思いますよ」

 

最後に、親が感じやすい「子どもとスポーツ」に関する悩みについて、松岡さんに伺った。“あるある”の質問に対するプレイリーダーならではの回答をぜひチェックして!

■子どもの運動悩みに、プレイリーダーの松岡先生がお答え

Q1. 我が子は運動や外遊びが全般苦手です。苦手意識のある子に、親はどう声かけしたらいいでしょうか。

A. 私も色々なスポーツ教室で教えているので、声かけに悩むお気持ち、とてもよくわかります。結論から言うと、決してネガティブな言葉を発しないということです。例えば鉄棒の逆上がりするときに、フォローする気持ちで「難しいよね」「できなくて当たり前だよ」「怖かった?」など言いがちですが、ネガティブな言葉を出すと運動に対してマイナスイメージついてしまいます。「頑張ってたね。次は絶対できるよ!」と前向きに声をかけるのが一番の応援です。

Q2. スポーツで子どもが失敗続きのとき、こちらが色々アドバイスをしても、怒ったり泣いたりして聞く耳を持ってくれません。こんなときはアドバイスしない方がいいのでしょうか?

A. 「成功するためには、どうしたらいいと思う?」と、子どもに問いかけてみてはいかがでしょうか。子どもに考える時間を与えてあげることで、自分で問題解決する能力が身につきます。大人は答えを知っているので、つい正解を言ってしまうこともありますが、自分で考えて、やってみて、できたら嬉しい。その繰り返しだと思います。あとは見本を見せてあげたり、一緒にやってみることも大事です。逆上がりとか、親も意外とキツくて出来なかったりしますよね。そこで笑顔が生まれて「お父さん(お母さん)もできなかったから、一緒に頑張ろうか!」と声をかけるのも良いですね。

Q3. 速く走れるようになりたい子どものために、親がしてあげられることはなんですか?

A. まず、速く走るポイントやコツを理解することは大事なことです。全国にはプロ目線で走り方を指導する教室がさまざまあるので、子どもが速く走るコツを学べる環境を与えてあげてみてはいかがでしょうか。ミズノでもかけっこ教室を運営していますよ。
そしてもうひとつ、速く走る為に重要なのは正しいシューズ選びです。ポイントは具体的に4つあります。
①踵をトントンして、つま先に0.5㎝程度の余裕があるくらいのサイズ感のものを選ぶ
②ファッション用の靴は重いので、運動用に作られたなるべく軽いものがベスト
③ソールが減っていると滑るので、定期的にソールの具合を確認する
④日本人の足は基本的に幅広なので、履いた時に足幅が窮屈になっていないか、逆にブカブカでないかフィッティングチェック
以上を気にしながら、靴を選んでみてください。

Q4. 幼少期に特に体験しておいたほうがいいおすすめのスポーツはありますか?

A. トランポリンがおすすめですね。トランポリンは足のバネや腕を使ってバランスを取るので、全身運動になります。また空中でバランス感覚が鍛えられ、お腹の中心に力が入るのでコアトレーニングにも繋がります。全身を使ってはずんだり、回転したり、足一本で飛んだりと、日常では味わえない感覚を楽しめるので、子どもも熱中しやすいですね。

Q5. 子どもも筋トレをする必要はありますか?

A. 筋トレをする必要はありません。全身を使う運動を通して、自分を支える筋肉や力を自然と身につけるのがいいと思います。幼児期に腕立て伏せなどの筋トレをやると、発育発達の障害につながり、怪我の原因になるので注意しなければいけません。

Q6. 球技が苦手で 、ボールが怖いと言う子の恐怖心をなくすにはどうしたらいいですか?

A. 「ボールが当たったら怖い」というのが恐怖心につながるので、ボールに似た風船などを使って遊ぶのはいかがでしょうか。スピードもゆっくりだし、ゆらゆらして当たっても痛くないのでおすすめです。あとはカラフルなボール使って、視覚から楽しそうな気持ちにさせてあげるのもいいと思います。アイテムをうまく活用して、恐怖心を好奇心に変えてあげてください。

ミズノのスポーツ学童『あそりーとAFTER SCHOOL』

住所:〒120-0024 東京都足立区千住関屋町19-1

電話:03-3870-8504

「あそりーと」公式サイト:https://asolete.jp/

「ミズノ」公式サイト:https://www.mizuno.jp/

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