子どもが夢中になる。森岡家流、遊びながら世界への関心を広げる読み方とは?【絵本と本と私の物語 #02】
18才で上京後、神保町で「古本」というカルチャーに出会い、本の世界の虜になった森岡さん。2人のお子さんたちにも、その本好きのDNAは受け継がれているのだろうか?
下の娘さんがまだ小学校低学年だった頃、毎晩のように親子で熟読していたという一冊が『マップス 新・世界図絵』だ。
ゲーム感覚で読む。森岡家流『マップス』の楽しみ方
ポーランド人のミジェリンスカ夫婦が、約3年の月日を費やして世界各国の文化や歴史、偉人、生き物などを、イラストと地図でまとめた本作。33の言語に翻訳され、シリーズ累計300万部を突破する世界的ベストセラー絵本だ。日本でも入学祝いや誕生日プレゼントなど、子どもへの贈り物として高い人気を誇る一冊だが、森岡家では一風変わった読み方でこの絵本を楽しんでいたという。
「2年くらい前に、下の娘が愛読していた絵本です。我が家では毎晩寝る前に読み聞かせをする習慣があったのですが、『マップス』は森岡家流の読み方があって。親子で楽しめるおすすめの読み方なので、紹介しますね。
1)子どもに目を瞑らせ、親はページをパラパラめくる。子どもに好きなタイミングで「ストップ」と言ってもらい、止めたページ(国)を開く
2)ジャンケンをして、負けた方が目を瞑る。勝った方はページの中から好きなイラストを選び、『西に進んで』『北に進んで』など方角を示しながら、そのイラストまで相手の指を誘導する
3)イラストまで誘導できたら『ストップ』と声をかけ、目を開けてもらう。指したイラストに関する紹介テキストを読んだり、自分たちでもっと調べてその知識を深める
我が家ではこの読み方を、ゲーム感覚で毎日楽しんでいました。世界各国の文化・歴史事情について学べるだけでなく、東西南北の感覚も自然と覚えられるのでおすすめです」
絵本だけで終わらせない。子どもの興味を伸ばすコツ
例えば、ドイツのページを開いたとする。その中でベートーヴェンが気になると思ったら、ベートーヴェンのイラストまで誘導し、辿り着いたら、ベートヴェンの曲を実際に流して更に知見を深めていく。そんな風に絵本だけで完結させず、自分たちで調べるアクションを加えることで、子どもの興味を広げる工夫をしていった。
「娘が一番好きだったのは、フィンランドのページ。サンタクロース村のイラストを見て『ここに行きたい!』と言うので、いつか一緒に行こうと約束しました。フィンランドのページでは、ムーミンや作曲家のジャン・シベリウス、建築家のアルヴァ・アールトの話まで広げていきましたね。娘はこの絵本に出会ってから国旗に興味を持ちはじめ、国旗の図鑑を買ってあげたことも。そんな風に無理なく楽しみながら世界への関心を広げられるのが、この絵本の魅力だと思います」
大人と言えども、世界について知らないことは多いもの。森岡さん自身も、子どもと一緒にこの絵本から多くの知識を学んだ。
「でもこの絵本を読む上で、私と娘の関心ごとが全く違ったんですよ。例えば私は偉人とか建築、歴史の紹介イラストに惹かれるんですけど、娘はヘビとか虫とか動物とか、生物のイラストばかり気になるらしく(笑)親子の興味の違いを知れて、そんな発見も面白かったですね。
あと、この絵本はページの縁にデザインが施されているのですが、その縁のデザインが各国で違うんです。私は気づかなかったんですが、娘がある時『この縁のデザイン、全部違うね。何でだろう?』と言うので驚きましたね。子どもの視点って面白いなぁとつくづく感じました」
絵本の時間は、家族の思い出を刻む
子どもはあっという間に成長し、次第に一人で本を読むようになる。森岡家での絵本の読み聞かせは、2年ほど前に終わりを迎えた。
親子で一緒に絵本を買いに行ったこと。一緒に物語の世界を楽しんだこと。その思い出の一つひとつが、いま財産になっている。
「『マップス』は、阿佐ヶ谷の『CONTEXT-S』で娘と一緒に買ったんです。ギャラリーなんですけど、そこで移動絵本屋さんをしている方がいたので遊びに行って。娘とこの本を見つけて、『じゃあ買ってみるか』って選んだことを今でも覚えています。
親子で一緒に絵本を買いに行く機会や、読む機会って、短期間で終わっちゃいますよね。子どもはすぐ成長して、読み聞かせの時間なんてなくなってしまう。だから今振り返ると、本当にかけがえのない時間だったなと実感します。もしお子さんがまだ小さくて絵本を一緒に読んでいるというご家庭は、その限られた時間をぜひ意識的に大切にされると良いと思います」
子どもと本の理想的な関係性とは
これまで子どもたちに、「本を読みなさい」と押し付けたことはない。しかしいつも自宅で本を読んでいる父の姿を見て、自然と子どもたちは読書家になっていった。
「読書好きと言うのは私たち親子の共通点ですね。本が娘たちにとって、いつもそばにあって、時に楽しみ時に気持ちを支えてくれるような存在であると良いなと思います。読書を強制はしたくないので、自然と親しんでもらえたらベストですね。
これまで娘たちに自分が好きな本をすすめたこともたくさんありますが、私が娘に教えてもらった本もたくさんあります。例えば、マドンナが作った『イングリッシュ ローズィズ』という絵本。この作品は上の娘が大好きだったのですが、女の子たちの友情物語を描いていて、彼女が選んでいなかったら私が手に取ることはなかっただろうなぁ。でもそんな風に、子どもが親に本を教えてくれる、という経験も嬉しいんですよね」