マタニティアイテムなのに、男女兼用?最新技術が光る、ザ・ノース・フェイスのジェンダーレスなウェア作り
【特集】ジェンダーレスなプロダクト図鑑
ジェンダーレスの価値観が社会的に広まる中、家族の買い物においても夫婦で共有できるものを選ぶファミリーが増えている。そんな想いに応えるように、ジェンダーレスなデザイン・機能性を備えたプロダクトが各メーカーから続々登場。新時代を生きる家族にオススメの名品を紹介。
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コロナ禍で密を避けるためアウトドアに赴く人が増えている。そんなアウトドアブームの装いをリードするアウトドアブランド、ザ・ノース・フェイスは、機能とデザインが両立したアイテムで高い人気を得ている。メンズ・ウィメンズ・キッズ・ベビーと揃うので、ファミリーで愛用している人も多いだろう。中でも男女で兼用できると販売直後から話題を集め、アウトドア派にもシティ派にも支持されているアウターが、「MTY ピッカパックレインコート(以下ピッカパック)」だ。
大人気のマタニティラインに加わった、“ユニセックス”なレインコート
ピッカパックはザ・ノース・フェイスのマタニティラインのアイテムだがウィメンズとは限定せず、ユニセックスなアイテムとして企画された。サイズは、通常ザ・ノース・フェイスは6サイズ用意するが、今回は3サイズのみの展開とし、夫婦で共有しやすいラインアップとしている。
特筆すべきがそのギミックでフロントとバックのジップを開き、ベビーカバーを繋げることで子供を抱っこ&おんぶできる形態になること。ベビーカバーのフードには子供の顔が見えるように、また雨が入らないようにクリアウインドウをセットするなどアウトドアブランドらしく細かい配慮がなされている。
「ザ・ノース・フェイスのマタニティラインは、妊娠中の女性たちの体の負担を、我々が培ってきたテクノロジーで軽減・サポートしたいという想いから、2019年秋冬にスタートしました。今年加わったピッカパックは透湿性や軽量性に優れており、産前から産後まで長く使用できます。また『育児は夫婦で協力して行うもの』と言う想いから、マタニティライン発足当時からユニセックスアイテムを作りたいと言う構想があり、今回それを実現すべく、夫婦で使えるデザインにしました。共働き家庭が増えている現代ですが、デザインやカラーリングから『男性が持てる育児用品が少ない』と言う声も多く聞かれます。そんなニーズに応えたアイテムです」
と話すのは、ザ・ノース・フェイスのキッズグループMD(マーチャンダイザー)矢野真知子さん。
ストンとしたソリッドなシルエットは、男性が着用しても違和感ないフォルム。表面上のデザインが極力排除されており、ミニマルな印象を醸す。類似アイテムにマタニティレインコート(ウィメンズ製品)があるのだが、こちらは少しフレアなAライン。そしてウエストのドローコードを引くことでギャザーが入りエレガントでフェミニンな印象になる点が異なる。
「ピッカパックのパターン(型紙)はかなり工夫を凝らしています。マタニティ向けに腹部を大きく広げると女性らしくなってしまうので男女が着られる良いバランスを検討しました。さらに縫製ではなく圧着でパーツを接合し、テクニカルでフラットなルックスにしています。ステッチだと水が浸入してしまうので余計なテープが必要になります。Less is more(ミニマルな仕様で最大限の機能を引き出す)という精神で、より軽さを追究しました」(矢野さん)
アウトドアからシティまで。リアルな子育てを想定し辿り着いた、抱っこ&おんぶの両面仕様
色展開はベーシックなブラック、ブラウンでタウンユースもしやすい。今後はアウトドアらしいヴィヴィッドなカラーバリエーションも考えているという。また夫婦お揃いで2着購入し、それぞれのベビーカバーを1着の前後に取り付ければ、抱っことおんぶが同時に可能に。こういった使い方は、年子や双子育児で抱っことおんぶを同時にしなければならないというファミリーに便利だろう。
※子供を抱っこ、またはおんぶをして着用する際は、安全性のため注意事項が有るため、着用前に公式サイトにて詳細を必ずご確認を。(https://www.goldwin.co.jp/ap/item/i/m/NPM12110)
「ピッカパックを企画する際、着用する親たちのヒヤリングを何度も重ね、おんぶに対応していることが必須であると結論に至りました。特にアウトドアで作業するときは、抱っこだとテントの組み立てなどが難しいんです。自転車も抱っこでの乗車は法律上違法ですが、おんぶは可能です*。このようにさまざまな子育てのシーンを想定した時、抱っこだけでなくおんぶにも対応していることは必然でした」(矢野さん)
*法律上、抱っこ紐・おんぶ紐など道具を使用し、確実に背負っている場合にのみおんぶでの自転車走行は可能。ただし、おんぶでの走行を許可されている自転車の種類や、子供の乗車人数、おんぶで乗れる子供の年齢は、地方自治体の規則により異なるため、必ず事前にお住いの地域の道路交通規則のご確認を。
ザ・ノース・フェイスが挑戦する、サステナブルでジェンダーレスなアクション
ザ・ノース・フェイスはアウトドアファッションブランドとして、環境保護などSDGs活動にも積極的だ。一般的なマタニティウエアだと妊娠中の限られた期間しか着用できないものが多いが、前述の通り、このピッカパックは産後も着用できるようロングユースにデザインされている。
また短期間で手放さなければならないウェアでいうと、子供服も挙げられるが、同社のキッズウエアはすべて無償で修理に対応するほか、体の成長に合わせてドットボタンやドローコードで袖丈などを調節できる「EXP GROW SYSTEM」を搭載することで、短期間でのサイズアウトを防いでいる。
消費サイクルが早いアイテムではなく、耐久性に優れ、長く着用できるアイテムを展開することが、ザ・ノース・フェイスのサステナブルなアクションだ。
また環境保護の取り組みだけでなく、ダイバーシティの観点から2019年秋冬シーズンからは、「#SHEMOVESMOUTAINS、わたしが動けば、世界が動く」というキャッチコピーのもと、女性躍進をサポートするキャンペーンも実施。アウトドアスポーツに関わらず、さまざまなフィールドで活躍する女性へのインタビューやトークイベントを行うなど、ジェンダー格差の改善にも取り組んでいる。
マーケティング担当として、ザ・ノース・フェイスにおけるジェンダー問題に取り組む中村真記子さんはこう語る。
「日本はアメリカに比べてSDGsへの意識が遅れていますが、徐々に弊社でも社員の男女比が半々になり、女性の視点がものづくりに反映されるようになりました。環境に配慮したサステナブルな考えを持ち、さらにジェンダーフリーを意識したブランドでないと、企業として生き残れない時代に入ったと感じています。ザ・ノース・フェイスはアウトドアブランドだからこそ、青・黄・赤など、メンズ・ウィメンズともに着こなせるヴィヴィッドな色展開が可能。私自身メンズアイテムをよく着るのですが、普段から夫とシェアしています。キッズやベビーも男の子、女の子と色で区別するモノづくりは行ない方針ですが、最近ではジェンダーで色分けして購入するお客様も少なくなってきているように感じます」
自然環境の厳しさを乗り越えていくハイテックなウェアたち
アウトドアのシーンで女性が懸念するのが、トイレや生理の問題だ。山奥に行けば行くほどトイレが少なくなっていく。そんな課題を解決するようなフェムテックアイテムも現在考案中だという。
アウトドアから始まり、タウンでも快適に過ごせるアイテムを展開するザ・ノース・フェイス。それでもやはりそのアイテムの進化を実感するのは、自然の中で過ごすときだろう。
「ジェンダーで言えば、体型・体力の違いから男性と女性の間に身体的能力に差があることは事実です。ですが、一度自然の中に飛び出せば、アウトドアを楽しむのに性別は関係ありません。我々の使命は、テクノロジーを追求し、誰もが同じように身体的にも精神的にも思い切りアウトドアを楽しめるウェアを提供すること。製品に込められたその機能性の高さを、ぜひアウトドアで体感してもらいたいです」(中村さん)
「自然に触れることで、子供たちの感受性が育まれると私たちは考えています。一方で山を愛する私たちは自然の厳しさも理解し、体温調節や動きやすさなどに配慮したアイテムを展開しています。ザ・ノース・フェイスのアイテムで自然環境におけるリスクを軽減しながら、家族で登山やキャンプを楽しんでもらいたいですね」(矢野さん)
ザ・ノース・フェイスでは社会貢献の取り組みのひとつとして、ファミリーに向けトレッキングや地図読みなどキッズネイチャースクールを実施しているという(現在はコロナ禍のためオンライン開催)。アウトドアの楽しさも環境への意識も感じさせてくれるブランドだ。
お問い合わせ:ザ・ノース・フェイス
TEL:0120-307-560
公式サイト:https://www.goldwin.co.jp/tnf/
キッズネイチャースクールの詳細:https://www.goldwin.co.jp/tnf/kids-ns/