人々のライフスタイルに寄り添うライフスタイルブランド〈キャラメル〉。デザイナーのエヴァに潜在する美学。
1999年にロンドンで創立された〈キャラメル〉はキッズウェアブランドとしてスタート。当時主流だったありきたりなキッズウェアやベビー服のスタイルを刷新し、ユニークかつモダンなデザインを打ち出した。デザイナーのエヴァ・カラヤニスは「私が1999年に〈キャラメル〉を始めた時は、キッズウェアもキッズマガジンもなかったの」と、当時のキッズウェア市場について話してくれた。「あの頃、ロンドンには白やベイビーブルー、ピンクといった定番スタイルのキッズウェアしかなかったわ。
エヴァはギリシャ出身。ギリシャでは法律の勉強をしていた異色のデザイナーだ。そんな彼女がロンドンに移ったのは、25年前だという。「ロンドンに移ってアート&ヒストリーを勉強したわ。その後、結婚し、子どもを授かったの。私は念願だった、オリジナリティ溢れる小さなショップを開いたの。フレームやキャンドルなど、私が好きだと思ったものたちを集めたショップだった。その中にスコットランドで見つけたキッズウェアなど、私がセレクトしたキッズウェアのコーナーもあったわ」と、彼女は常に自分の好きなものに忠実であり、テイストが明確だ。それは、今も変わらず、彼女のデザインにも反映されている。そして、「小さい時からお人形のコーディネートや自分の服に興味があった」と話すエヴァは、〈キャラメル〉をスタートする前から、キッズウェアに興味を持っていたという。キッズウェアへの興味、自身のテイストへの探求、そして、子どもを設けたことにより生じたキッズウェア市場への疑問がブランドスタートを後押ししたのだろう。
〈キャラメル〉の服は、コンテンポラリーかつパーソナル。つまり、服は自身を表現する手段であり、子どものライフスタイルとリンクしている服を提案し続けている。“服はパーソナリティを表現するもの”というエヴァのフィロソフィーがこのブランドの中核となっている。「私は子どもたちの服を見ているのが好き。〈キャラメル〉の服は、ウェアラブルで自由に纏うことができる。服は着飾るのでなく、個性を主張しすぎるためのものでもない。子どもは人形ではないから、飾りつけるのはなく、決して行き過ぎてない服を提案したいと思っている」。そんな彼女が手がけた服は、英国風のチェックやツイードなど、オーセンティックでクラシックな要素をキッズウェアにも取り入れつつ、動きやすいユニークなカットを施していたり、軽いオーガンザ素材を使用するなど、モダンとクラシックが融合している。
今ではウィメンズラインも始め、デザインの幅を広げている。
日本では、代官山に店を構える〈キャラメル〉。「イタリアのトレードショーに参加したの。従来の個性のないイタリアブランドばかりが並んでいたけれど、私は、”NEW VIEW”というセクションで展示をしたの。そこには、当時は3ブランドしかいなかったわ。ベルギーデザイナーとイタリアンデザイナーと私たち。そこでサエグサさん〈ギンザのサエグサ〉に出会ったの。彼が私のブランドを気に入ってくれて、私の服を銀座で取り扱ってくれたわ。その後、『日本にショップをオープンしたい』と言ったの。彼は、『いつかね』って言ってくれて、その10年後に日本に招待してくれた。その時に見つけたお店が代官山にあるこの場所だったの。初めは一緒にビジネスをしていて、5年後、私は一人でここを持つことになったのよ」と話す。なぜ日本だったのか。日本へのこだわりが特別あるわけではないようだ。「私はあまりビジネスプランを立てるタイプの人間じゃないの。単純に日本が好きだし、日本人のテイストとわたしのテイストはマッチしていると思うの。私の美学は日本の美学と似ているのよ」。と気分のままに、そして直感を信じてここまで来た様子が伺える。
今後について尋ねると、「〈キャラメル〉はわたしが経営しているブランド。ロンドンでスタートしてから、今となっては少し他の国にも進出しているけど、これからもこのブランドを大企業に拡大させるつもりはないの。何百人のチームで100店舗を持つような会社はわたしには向いていない。わたしはこのブランドが好きで、わたしがいいと思ったプロダクトを扱いたいわ」と揺るがない。「代官山店では、
“子どもに服を着せる”ことを深く考え、ブランドをスタートした彼女。親として、そしてデザイナーとして、彼女は今の親子の関係性を言及する。「今の親はとても子どもと距離が近い。それはいいことだと思うわ。でも、完璧なイメージを確立するため、期待やプレッシャーを与えすぎることは新たな問題ね。子育ては競争ではないし、パフォーマンスのためのものではない。全てが早く進みすぎている。もう少し、スローダウンしてもいいんじゃないかな。もっと今を楽しんでほしい。幸せとは何か?完璧な教育、服、ホリデーを親は与えようとするけど、それが子どもへのストレスにもなる」。“リラックスして”。それがエヴァからのメッセージだ。