DATE 2017.11.21

映画『gifted/ギフテッド』マーク・ウェブ監督が語る、子育てで大事なこと

親であれば、子どもに最高の教育を受けさせたいと思うのが普通だろう。子どもが優秀で、優れた才能をもっていたらなおさらだ。教育か愛情か、選びがたい選択を迫られたとき、どうするべきか? そんな問いかけが心に残る映画『gifted/ギフテッド』が11月23日(木祝)から公開される。

メガホンを取ったのは、『(500)日のサマー』『アメイジング・スパイダーマン』シリーズを手がけるマーク・ウェブ監督。ラブストーリーでもアメコミ大作でもない、家族をテーマにした今作を撮ろうと思ったのはなぜか? 来日した監督に話を伺った。

「一番の理由は、脚本が素晴らしかったから。脚本を読んだ後に、とてもいい気分になったんだ。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズを続けて撮り、大作はスタッフが多く、クールでヒップな作品を作らなくてはいけない責任や期待度も高い。政治的な事情もあり、映画をつくる以外の問題がいろいろあったから、次は『シンプルに映画を作りたい』『ただ心があたたかくなるような映画を作りたい』と思ったんだ」

──『gifted/ギフテッド』の主人公は7歳の少女メアリー。赤ちゃんの頃に数学者の母親を亡くしたメアリーは、叔父のフランクに育てられてきた。小学校に行き始めたメアリーは、数学のギフテッド(生まれながらに高度な知的能力をもつ人)だと判明する。メアリーをギフテッド教育で名高い学校へ行かせようとする祖母に対し、フランクは亡き母の遺志を守り「普通に、子どもらしく」育てようと対立する。

父と子でなく、叔父と姪の物語。そこでは、「あえて親子のような愛情を示さない状況がふたりの関係の核になっている」と監督は言う。

「フランクは、姉が突然死んでしまった怒り、姪を育てなくてはならなくなった怒りから、 “ 自分が父親になることを拒否する” ような強い感情をもっている。そこに重点をおいて描いた。そもそもフランクは、父親になる心の準備ができていない自分を、 “ 父親の資格がない、だめな父親” とも思いこんでいる。しかし、フランクの行動からメアリーととても深い心のつながりを感じているのが伝わってくるが、それを否定している」

 

──ギフテッドでありながら、フランクが大好きでふたりの暮らしを何より大事にするメアリー。キュートだけどちょっと生意気、そんなメアリーを演じるのが、TVドラマ『フラーハウス』にも出演しているマッケナ・グレイス。撮影当時9歳だったマッケナは「自然に感情を表現できる素晴らしい才能の持ち主だった」と語る。

「まず彼女に、『ペーパームーン』と『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』を観て参考にして欲しいと言った。だいたいの子役の演技は大げさで派手になりがち、シチュエーションコメディに出てくるような演技にはしたくなかったんだ。しかしマッケナは、本当にうまく感情を表現してくれた。

撮影の最初が教室のシーンだったんだけど、先生であるボニー役のジェニー(・スレイト)に自分で教材を作ってもらって、本当の授業のようにやってもらった。10分くらい経つと子どもたちも撮影をしていることを忘れ、ふだんと同じ様子になる。そこでカメラマンにキューを出し、撮影をはじめた。ジェニーがセリフを言い、マッケナがそれに続く。僕は彼女に『この映画は、こんなふうに自然に撮るんだ』と分かってほしかったが、彼女もきちんとそれを理解してくれた。これがひとつの指標になって、自然な流れの中で演技を引き出すことができたんだ」

──監督にも姪がふたりいて、そして父親は数学者だった。ストーリーに自身がフィットする部分もあり、それが脚本に惹かれた理由のひとつにあったのかもしれない。監督は、子どもの頃どんな家庭で育ったのか聞いてみた。

 

「父は数学の教授で、大学の共通一次の試験問題を考えたりもしていた。母は生物学者で、アインシュタインの誕生日には、家族みんなでお祝いをしたね。そんな家庭だったからか小さい頃の僕は、もの静かで内気な子だった。父は、僕が大学の先生になって欲しかったみたいで、ロサンゼルスに出た後も『大学院に戻って教えたらどうだ』と言っていたよ」

──ギフテッドは、子どもの人生に大きな影響を与える。子への愛情は欠かせないが、ギフテッドかどうかを知り、その後どんな教育を選ぶかは、子どもの人生においても重要な要素になる。監督が子どもの人生で、最も尊重することは何だろうか。

 

「僕は子育ての経験がないから、そんなことを言うのも正直おこがましいんだけど “ 見極め” が大切なんじゃないかと思う。子どもによって、何を尊重するかは異なる。同じ言葉を伝えたとしても、伝えたいことや内容は違ってくる。子どもの特徴、秀でたこと、特別なことを認めてあげることで、疎外感や孤独感を感じないですむ。

長所をきちんと認め、本質を見極めてあげることが大切なんだ。それによって、親子のつながりがもてる。『ああなれ』『こうでないといけない』と、親が求めることを子どもに押し付けてはいけない。本来の子どもの姿を見極めて、伸ばしてあげることが大切なんだと思うよ」

教育か愛情か。それは選択するものでなく、どちらも必要であり、子どものパーソナリティを見極めることが一番重要なこと。見終わった後は、心がほんのりあたたかくなり、家族と過ごす時間を大切にしたくなる。そんな映画『gifted/ギフテッド』は23日(木・祝)から公開、ぜひ映画館でチェックを。

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