DATE 2019.12.02

注意力散漫な我が子の育て方とは?

インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」や、日本古代の伝承知識「コトハ」など、世界の医療知識に長けた蓮村ドクターが、ママ・パパの育児悩みに答える新連載がスタート!記念すべき第一回目は、集中力が持続しないお子さんの教育方法に悩むママの疑問にお答えします。

Q. 注意力散漫な我が子。遊ぶにしても、次から次へと色んな遊びに手を出すので、じっくり何か1つのことをやり遂げる気配がありません。この先習い事など、1つのことを集中して続けられるのかとても心配です。

蓮村誠:まず前提としてですが、本来人は、それほど長い時間1つのことに集中し続けることができません。5分で飽きる人、20分で飽きる人。持続できる時間は多少人によって違いますが、基本的には長い間集中力を持続させることは難しいので、お子さんに集中力がないからといって不安にならなくても大丈夫ですよ。

この前提の上でお話しますが、人は「きちんと派」と「だいたい派」という2つの気質に分けることができます。「だいたい派」は、物事に新鮮さを感じると熱中して取り組むのですが、新鮮さが無くなった瞬間に飽きて止めてしまうタイプ。「きちんと派」は、新鮮さは重要ではなく、はじめたことを最後までやり遂げて終わらせることにやりがいを感じるタイプです。「だいたい派」は“はじめたい”という思いが強く、「きちんと派」は“終わらせたい”という思いが強いんですね。

 

※「だいたい派」「きちんと派」セルフ診断はこちら

「だいたい派」の人は、一つのことに取り組むと途中でもうその次のことを考えていて、どんどんやりたいことを探し求めて行きます。一方「きちんと派」は、一度はじめたら終わるまではそのことだけに集中します。相談者さまのお子さんは、次々に、いろいろなことに手を出すとのことなので「だいたい派」の気質を感じますが、いろいろなことに気が向くこと自体は悪いことではないので大丈夫。むしろ好奇心が強く、器用にいくつかのことを同時進行できるマルチタスク型なので、そこを褒めてあげると良いのではないでしょうか。

Photo by Aaron Burden on Unsplash

「だいたい派」は、新鮮さを感じる時にこそ集中力が増します。なので飽きたらすぐに見切りをつけて次へ、そしてまた次へ、それにも飽きたら最初に戻ってまた再開……といったように、いろいろなことを新鮮な気持ちで回しながら物事を完了させようとします。それが本人にとっては一番効率的なんですね。逆に「きちんと派」のように、「最後までやり遂げたら次のことに進む」というスタイルを求めると、やる気を削いでしまう可能性があります。本当は「だいたい派」なのに、親や先生から「1つのことを最後まで取り組みなさい」と注意されて「偽きちんと派」になってしまう人も多いです。ですがそれは、本人の無理にも繋がってしまいます。

「だいたい派」には時間を、「きちんと派」には量を決めてあげよう

 

「だいたい派」の人には物事が終わったという感覚がないので、放っておくと終わりが見えずに延々とやり続けてしまう傾向があります。そういうお子さんには、時間を決めて行動させてあげるのがおすすめです。「〜時には一旦終わらせてね」「〜時には帰ろうね」と時間だけ設定してあげて、やり方は本人の考えを尊重してあげる。「もう時間だよ」と途中で声をかけて、途中でも手を止めることができるのが「だいたい派」です。一方「きちんと派」の場合、物事を終わらせること・目標を達成することが最大の喜びなので、時間を決められると逆に苦しくなります。「だいたい派」と違って、時間内に終わらなかった場合に途中で止めるというのが一番のストレスなんですね。そういう子どもには「今日はここまで終わらせようね」と、予め取り組む量を決めてあげると良いでしょう。その量は、終わらせたい時間内にこなせる量です。そうしてあげると時間内で終わった達成感を味わえるので、成功体験になります。ちなみにこれは大人も同様なので、家庭でも職場でも「だいたい派」ならば終わりの時間を決めて、その中で複数の作業を熱中できる順に回していく。「きちんと派」なら達成できそうな量を決めてから、そのための計画を立てて行動してみてください。

 

「だいたい派」は、とにかくいろいろなことにチャレンジしたい性格。なのでお子さんには一日の終わりに、「今日は色んなことに挑戦したね。偉かったね」と褒めてあげると◎。反対に「きちんと派」の子には、「今日も最後まで取り組めたね。偉かったね」と終わらせたことを評価してあげると良いですよ。

 

Photo by Caroline Hernandez on Unsplash

注意力散漫な行動には“終わり”を習慣づけする

 

質問者さまの悩みに戻りますが、「だいたい派」のお子さんの場合、気質的にいろいろなことに気が向くので、確かに注意力散漫に陥ることも多いでしょう。例えば「ドアをちゃんと締めない」「物をすぐに無くす」と言った傾向があります。それは彼らが、はじめることに気を取られて物事を終わらせることが苦手だからです。ですがそれを「だいたい派だから仕方ない」と放置するのはまた違う話ですよね。これはマナーなので、一般常識として身につけた方がいい行動に関しては、指導してあげましょう。終わらせることが苦手なお子さんには、「大切なものは最後に必ずこの箱にしまおうね」「遊んだらお片づけまでしようね」など、“終わり”を習慣化させてあげるのがおすすめです。

ちなみに「習い事が続くか不安」とのことですが、「だいたい派」のお子さんに習い事を続けさせるコツは、色んな習い事をやらせることです。1つに絞ると、いずれ飽きてしまう可能性が高いので、複数の習い事をこなすことで代わるがわる没頭しながら長く続けることができます。「きちんと派」のお子さんは、終わりがあると達成感を感じるので、発表会や大会がある習い事はやりがいを感じやすいと思います。

Photo by Clark Young on Unsplash

自分の気質を矯正しようとすると、自分らしさを失ってしまう

 

大人の場合、「だいたい派」の人は家庭や職場で「自分はいい加減だからきちんと計画的に行動しなくちゃ」と自分を追い詰め、その不安から終わりが見えずにやり過ぎてしまったり、「きちんと派」であれば何事も丁寧にやる自分に疲れて、「どうして適度に手が抜けないんだろう、こんなに要領が悪いんだろう」と自分を責めるケースも多いです。ですがそんな風に自分の気質を無理に矯正しようとすると、自分らしさを失ってしまいます。「きちんと派」である自分、「だいたい派」である自分を否定する必要はありませんし、その性質を認めて、活かしながら行動する方が身体も心もずっと楽になるはずです。

最後に、親子関係において大事なことは「きちんと派」「だいたい派」の特徴を理解して、それぞれの気質を尊重してあげることです。人生の終わりを迎える時、「だいたい派」の人は「いろいろなことに挑戦して充実した人生だったな」と感じ、「きちんと派」の人は「やりたいことを成し遂げた充実した人生だったな」と感じるでしょう。どちらも素敵な人生です。なので、どちらが偉いというのは全くありません。親子で「きちんと派」「だいたい派」とで気質が違う場合には、自分のやり方に準じて子どもの行動を注意しがちになると思います。ですがそれは互いにストレスですよね。「親と子でもタイプが違うんだな」「あなたはあなた、私は私。やり方が違うんだね」と違いを区別して認め合えると、心地良く過ごせると思いますよ。

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