DATE 2019.07.05

第32回:salvia デザイナー セキユリヲより
子どもが自分で考えたことは(間違っていても)「やってみよう」と言ってあげる。

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。2月からは、人気絵本作家であるtupera tuperaの中川敦子さんとサルビアを主宰するデザイナーのセキユリヲさんによる往復書簡をお届けします。

セキユリヲさんから中川敦子さんへ。

 

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中川敦子さま

 

こんにちは。あっという間に1ヶ月が経ちますね。最近は、ローカル電車を乗り継いで海に行く、というのが家族内で流行っています。波打ち際でパシャパシャ水遊びをして、ヤドカリを探して、きれいな貝を拾って。おいしい海鮮とアイスクリームを食べて、日帰りの旅。夏は夏らしく、汗をかきながら過ごすのが好きです。

 

娘さんの担任の先生、素敵な方だねえ。自分の好きな世界を持って、キラキラと目を輝かせて話してくれたら、子どもたちも一緒にいて毎日面白いよね。うちの子たちも、いろんな大人にいろんな刺激を受けて育ってもらいたいです。
息子さんの「ちくわ」の話も、かわいすぎる! 想像力のかたまりだね。一緒に笑いたいわー。お手紙にあった「叱るときの判断」ですが、私はかなりゆるい方かも。多少お馬鹿さんなことをしていても、おもしろければよし! です。電車の中など公共の場では他の方が不快にならないように話しますけどね。そのせいかな、娘はなかなかのおもしろキャラに育ってます(笑)。

 

自分はどんな時に子どもを叱っているかなあ、と考えてみたのですが、4歳の長女には「何度言っても聞かない時」かな。何度言ってもお風呂のあとに着替えをしない、ごはんを食べはじめない、というパターンが多すぎると、だんだん鬼の角が長くなり、私の声のトーンも低くなって、ドッカーン!!!と雷が落ちます。よく「イラっとしたら6秒置いて冷静になるといい」とか聞くことはあるけれど、まあ自分の子にそんなことができる私ではないので、喜怒哀楽は素直に表現しています。スカッとね。

 

2歳の息子に叱ることはほとんどないのだけど、他の子の髪の毛を引っ張ったりすることがあって「それは痛いよ」と繰り返し伝えるようにしています。彼にとってはそれもコミュニケーションなので、「ダメ」と否定するのではなくて、「痛いよ」「嫌だよ」と短く、諭すように話します。これも、スカッとね。

 

それと、まわりのどんな子に対しても、子どもが自分で考えたことは(間違っていても)「やってみよう」と言うようにしています。一度自分の思うようにやってみて「なんか思ってたのと違う、もっと知りたいな」と気づいたら、その気持ちを尊重したいし、「こっちの方がおもしろい」と思うのならそれも素敵なことだなあと思うのです。

 

この間、うちの子がワークショップに参加した時のこと。十字にくくった枝に毛糸をぐるぐると巻きながらきれいなオーナメントを作る会だったのですが、娘は教えてもらった通りにはやりたくないと言う。教えてくれた大人も見ていた私も「そうじゃないよ」とはあえて言わずに経過を見ていたら、自分のやり方で毛糸を巻いて、いろんな色の糸を重ねているうちにモコモコの大きな丸い玉ができていました。美しい見本とは違うけど、「らしさ」が満ちあふれていて、いいなあと思った。周りにいた大人たちも同じような気持ちを共有してくれていたみたいで、あたたかく見守られている娘を見て、うれしくなりました。こんなシチェーション、敦子さんも経験あるでしょうか?

 

そうそう、前回ちらりとお伝えした「代々木深町フカマルシェ」、無事開催できました!
私が今住んでいるのは東京の渋谷区。自転車で渋谷にも新宿にも青山にも行けてしまう便利さもありながら、代々木公園と明治神宮の大きな森がすぐ近くにあり、都心のど真ん中にしては自然を感じられる静かな住宅地です。近くに「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーにしたプレーパークがあります。商店街の中でもチェーン店よりも個人で営むお店の方が存在感が大きかったり、オーガニックなものを扱う食品店やレストランも多かったり。自由なスタイルで働いて子育てしている魅力的な人との出会いの場も多いです。

 

日頃から付き合いのあるママ友から「このまちのお店と人と大地をつなぐマルシェをはじめたいので、装飾や広報物のデザインをお願いできないかな?」と声をかけてもらって、3ヶ月前くらいから準備が始まりました。『会場が「代々木深町小公園」でしょ。深町で「深まって」マルシェをしてみよう、で「フカマルシェ」!』ダジャレ的に名前を提案したのをはじめに、実行委員として「深く」関わってきました。

 

さまざまなキャリアを持つお母さんたちや地域に長く住む方、お店を営む方々と毎週のようにミーティングしながら、予算ゼロスタートの中、苦労も心配もよろこびも達成感もたくさんでした。公民館で草木染めをした布を使って会場装飾用のガーランドを作ったり、みんなで情報を持ち寄りながら地域のまちあるきmapを作ったり、サインや看板も顔なじみの人たちが集まってわいわい作ったり。会場内でゴミを出さないような工夫を考えて、会場となった公園の大掃除イベントをして。当日だけでなく、開催するまでの道のりが楽しく、意義深くできたのがとてもよかった! 本番の準備をしながら「まだ終わらないでほしい」と願っていました。開催日はお天気にも恵まれ、たくさんの近隣の人たちが集い、美味しいものを食べ、遊び、喋り、とてもいい場になりました。このあと「まちあるきmap」を見てさらにお店に足を運んで、交流を「深めて」もらえたら、すごくうれしい。そしてこのまちがまた面白く、居心地がよくなるといいなあと思います。

 

今までのつながりも大切にしながら、子どもがいるからこそ出会えた人たちと、子育てしている今だからできる面白いこと、これからも広げて行きたいなあと思います。
ではまたね。

 

セキユリヲ

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次回更新は7/19(金)の予定です。絵本作家tupera tuperaの中川敦子さんからのお返事です。

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