DATE 2019.09.06

第36回:salvia デザイナー セキユリヲより
ゲームもスマホもタブレットも、その時のその子に必要ならやってみればいい。

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。2月からは、人気絵本作家であるtupera tuperaの中川敦子さんとサルビアを主宰するデザイナーのセキユリヲさんによる往復書簡をお届けします。

セキユリヲさんから中川敦子さんへ。

 

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中川敦子さま

 

北海道の夏休みから戻ってきました。今回は20日近くを過ごし、川遊びにキャンプ、山の散策など外での遊びを堪能しました。何度も行き来している間に、頼れる友人や一緒に子育てできる仲間も増えてきて心強い限りです。小さな子どもを育てていると、親子で一緒に活動できたり、価値観を共有できるコミュニティってとても大事だなあと思っていて。子ども同士も喧嘩もするけど最終的にはものすごく仲良くなって、見ていて頼もしいです。小学生のお兄さんたちが捕まえた川魚を素手で触ったり、車で山道を走っていたらキタキツネに遭遇したり、たくさんの新鮮な体験を心のお土産にできたと思います。

 

大文字焼きいいなあ! 京都のお祭りや行事はほかの地域にはない、歴史とともに歩んできた独自の重みと雰囲気がありますよね。興味があってもなくても、住んでいるだけで自然に日本古来の伝統に触れられるという暮らし、贅沢だなあと思います。私たちも、東京で、北海道で、夏は地元のお祭りや盆踊りや花火大会を楽しみました。下の子は花火の音が怖くて、ずっと泣き通しでしたけどね…。

 

そして、福岡での展覧会、お疲れさまでした。お子さんたちがtupera tuperaの展示の準備を見たり、一緒に参加できたりできるのって、親にも子にもすごく貴重なことだと思うんですよね。親の仕事のプロセスを子どもの目の前で見てもらえる、経験してもらえるというのは、自営やフリーランスで仕事をしている人の特権かも。私は自宅で仕事をしているので、家で作ったポスターやチラシが、街のどこかに貼られたり、置かれたりするまでの一連の流れを、長女はなーんとなくわかっているし、面白く(そしてちょっとうれしく)感じていると思う。実はこのお手紙も、隣で長女が折り紙でいろいろ作っている脇で書いています。時々「何やってるのー?」なんてお互いの手元を覗き込んだり、一緒に仕事している仲間みたいな気持ちにもなれます。

 

ゲームやスマホとの付き合い方のこと、興味深く読みました。うちは年齢的にまだ先のことであまり現実感がないのだけど、敦子さんが書いてくれた「絵本の世界と同じ、ひとつのコミュニケーションツール」と考えると、気が楽になりますね。いろんな世界を知るきっかけにもなるし、心と体がすくすくと育って、それらを受け入れるベースができた上で、だらだらと何時間も画面を見たりするのでなければいいかな。

 

うちの子は今、テレビやネットの動画を見て、流行っている歌とかアニメのテーマソングとかを覚えて友達と歌ったり踊ったりするのが大好き。「ショーをします!」とおじぎをし始めたら、公園でも家の中でも、ちょっとした段差を見つけると「どこでもステージ」になっちゃいます。楽しさを友達同士で共有することで、その世界にさらにどっぷり浸っているみたいです。私も音楽好きなので、自分の好きなアーティストのミュージックビデオはすごい勢いで見せているし。「レキシ」のMVとか、本当に面白くて、ゲラゲラ笑いながら娘もはまっています。

 

私自身は小学生の頃マンガが好きで、「りぼん」と「なかよし」を貸し借りしたり、休み時間に絵を描いてあげると友達がよろこんでくれるのが、(当時の気弱な自分にしては)ちょっとの自信につながったりしていたように思います。でもあの時代は「マンガは悪」みたいなところがあったのでしょう。ある日、学校から帰ると、少ないお小遣いを使ってずっとため続けていたコミック誌が私の部屋から消えていました…。母が捨ててしまったのです! 悔しくて発狂しまくったな〜(笑)。母からすると、マンガばっかり読んでないで勉強してよという気持ちもあっただろうし、年を重ねるごとに積み重なっていくのがいやだったかもしれないけど、断りもなく捨てられたことへの怒りといったら! 今でも忘れられないわ〜。でも、その後もまた買い続けてあっという間にマンガの山が出来上がってました。

 

今はゲーム、スマホ、タブレットなど、私たちの子どもの頃とは違うメディアがたくさんあって、それぞれが日々進化し続けているからひとくくりにできないけど、その時のその子に必要ならやってみたらいいと思う。親も一緒になって大らかに楽しめたらもっといい。うちの子たちが大きくなる頃には、ネットやSNSの環境なんかはまたガラリと変わるような気もします。子どもから教えてもらうことが今よりたくさん出てきそうですね。

 

秋の気配がしてきました。いろんなものがおいしい季節、いっぱい食べましょう!
ではまたね。

 

セキユリヲ

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次回更新は9/20(金)の予定です。絵本作家tupera tuperaの中川敦子さんからのお返事です。

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