〈tupera tupera〉がパリを街歩き。子ども向け美術館訪問や絵本作家との交流
サロンでのイベントのない日には、街歩き。美術館を訪れたり、絵本作家との交流もありました。「ポンピドゥー・センター(国立芸術文化センター)」は近現代美術のコレクションで知られていますが、子どもたちのためのプログラムも盛んです。中2階にある「Children’s Gallery」では、現代のアーティストやクリエイターがデザインした展覧会を開催。 地下には幼年から参加できるワークショップスペースもあり、施設の充実度とデザイン性の高さに亀山さんは驚きの様子。
次に訪れたのは、チルドレンミュージアム「Le Musée en Herbe」。ゲームのようにキャラクターなどをピクセル化して、世界中の国に設置している、フランスの作家〈INVADER〉の展示『HELLO MY GAME IS …』が開催中。子どもたちも見学に訪れていました。同館ディレクターのシルヴィ・ジラルデさんは、以前から〈tupera tupera〉に興味をもっていたそう。直接絵本を見てもらいました。「アイデアが豊富ね! イマジネーションが豊かでアクティブで美しいわ。知り合えてよかった。ワークショップから何か一緒にできるといいわね」と嬉しい反応です。
パリでは作家との出会いもありました。アヌック・ボワロベールとルイ・リゴーの二人です。美しいイラストレーションと、しかけの素晴らしさで世界中の話題をよび、日本でも2冊の絵本が翻訳出版されています。亀山さんが今とても会いたかった作家です。「彼らの絵本『ナマケモノのいる森で』は、僕たちの最初の絵本『木がずらり』に近いものを感じるんです。それにコンビで作品を制作していることも同じだし」と、亀山さん。二人もパリで『かおノート』を知り、いいアイデアだと思っていたそう。
アヌックが主にイラストレーションを描き、ルイが仕掛けの構造を考えます。「テクニックが先行しないように、なるべくシンプルを心がけている」とルイ。「あまり加えすぎないように、ジャッジするのは私」とアヌック。「一緒だ!」と亀山さん。〈tupera tupera〉も最終ジャッジは中川さんが担うことが多いよう。いろいろな共通項を見つけたひと時で、日本でのワークショップや展示など、一緒にできないだろうかと、夢は膨らみます。
もう一人、亀山さんが興味をもっていたフランスの作家ブレックスボレックスさんにも短い時間ですが会う機会を得られました。シルクスクリーン印刷の職人をしていたという彼は、90年代に私家版の本をつくり始めました。ライプチヒのブックフェアで『PEOPLE(原題 Imagier des gens)』が、「最も美しい本」賞を受賞し、注目を集めています。今回の児童図書サロンでも新作絵本『Nos Vacances(私たちのバカンス)』が絵本部門の金賞を受賞しました。 「新作絵本から宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』を想起しました」と亀山さんが言うと「宮澤賢治は好きな作家。たくさん読んでいるよ」とブレックスボレックスさん。制作者同士だからこそ、分かり合える部分があるようです。
亀山さんの旅のアルバムから
「空港からパリ市内へ移動中の風景。郊外の建物の壁ですが、豹みたいな動物が 窓から入ろうとしているのが面白くて、パリに来たなって思ったんです」
「ルーブル美術館近くを散歩中に出会った壁面。古い挿絵のような絵に惹かれました」
「児童図書サロンの隣りの空き地に残された鉄工所跡。夕暮れで浮き立つシルエットがカッコいい」
「絵本専門店『Chantelivre (シャントリーヴル)』を訪れました。翻訳版が海外の書店に置かれているのを自分の目で見るのは初めて。おおおー『しろくまのパンツ』がありました」
「『Le Musée en Herbe』のミュージアムショップには、『あかちゃん』がありました。うれしいな」
「一番好きな『オルセー美術館』。元は駅舎だったそう。展示室の壁が濃い色だったり、絵の前にアンティークの椅子が展示してあったり。展示方法がスタイリッシュで素敵です。必ず見るのがルソー(写真左)。なぜだかルソーのサインが好きなんです。 シンメトリーで巨大なビニールハウスみたいな建物の吹き抜けのフロアは、みなさん階段に座っておしゃべりしたり、休憩したりと思い思いに過ごしていて、そんな雰囲気も居心地がいいのです(写真中)。 フランソワ・ポンポンの作品の『しろくま』。赤いパンツをはかせたいな(写真右)」
旅を終えてパリの印象はどうだったでしょうか?
「15年ぶりのパリは、町並みが変わってないなあと思いました。僕が今住んでいる京都も、大型施設はあるけれども、町の雰囲気はあまり変わらない。パリと京都は似ているとよく言われますよね。新しいものはできても、町のイメージがゆるがないのがいいと思います。石の建物や石畳が好きで、友だちの肩を叩くように、ついつい石の壁を叩いちゃうんです。重厚感が好きなんです。変かな?」
世界中に素敵な作品を届ける〈tupera tupera〉の活躍に、今後も目が離せません。
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