DATE 2017.04.10

遊びながら「自治」や「公共性」を身につけていく ― 野生のクリエイティビティを育む:第2回

未来を生きる子どもたちにとって、本当に必要な「学び」とはどんなものなのでしょうか?
今回は、遊びながら「自治」や「公共性」を身につけていくプロジェクトや、子どもたちのクリエイティビティについて、ミュージアム・エデュケーター会田大也さんにお話を伺います。

遊びながら「自治」や「公共性」を身につけていく

私が関わった「コロガル公園」のプロジェクトを紹介しましょう。これは山口市にある山口情報芸術センター(YCAM)で、2012年に誕生した仮設の公園プロジェクトで、2016年までに5 種類ものシリーズが生まれています。斜めの床面と、用途の決まっていないメディア遊具が随所に設置されたこの空間は、子どもたち自身が「自治」や「公共性」を遊びながら身につけられる場所として育っていきました。

 

 

© Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

「公共性」なんていう抽象的な知恵は、なかなか「教える」ことが難しいのですが、コロガル公園でのはじめのきっかけは、子どもたちが大人のスタッフのお手伝いをするようになったというささいなこと。そこから「こどもスタッフ」という特別な役割が誕生し、大人が子どもたちのやりたいことをヒアリングしたり、サポートしたりした結果、次第に彼ら自身がワークショップやお祭りイベントを企画し、運営するようになったのです。

 

そうした中で、「公園」というパブリックな場所が、「この場を使わせてもらっている」という顧客意識よりも「自分たちが使いこなしている」というオーナーシップの意識へと醸成されていったように思います。コロガル公園では、「公園を大切にしましょう」とか「お友達と仲良くしましょう」といったことをスタッフが口うるさく言うことはありませんでした。その分、居心地よく過ごすために必要なことを、子どもたちが自ら探っていったのです。その結果として、自然と自治や公共性が重んじられるようになりました。ことさら「プロジェクト型学習」を謳っていたわけではありませんが、結果的に子どもたちが非常に高度な社会性を遊びの中で自然と身につけていった。その様子は制作者の立場からすると感動的ですらありました。

 

※「コロガル公園」プロジェクトはこちらの記事でもご紹介しています。

みんなのアイデアで成長する遊び場、コロガル公園

 

 

 

野生のクリエイティビティを育む

私は、子どもたちの活動を観察しながら、クリエイティビティというものはいったいどこからやって来るんだろうと日々考えています。今日、「21 世紀型スキル」や「非認知スキル」と呼ばれ、いわゆる従来の学習到達度テストでは測ることができない能力の必要性が叫ばれていますが、その中でも「クリエイティビティ」は最も重要な要素とされています。

 

スキルを一方的に与えようとする従来の教育モデルは、100 年以上も前から見直そうとする動きがありましたが、まだ日本の学校では創造力を育む環境が充分にあると言えない状況です。しかし、学校にすべての要望を解決してもらおうとする必要は必ずしもないのかもしれません。子どもたちは学校以外の場所でも、さまざまな生活シーンの中で、色々な価値観やそれらの対立、矛盾に巻き込まれていきます。その中で、自分なりの判断や応用力を培っていくことができるはずです。異なる文脈や文化を知ることで新しい価値を発見することはできますし、このことに自ら気づき、社会的に実装していく能力を、私は「野生のクリエイティビティ」と呼んでいます。

新しい学びのかたちー会田大也ー野生のクリエイティビティイラスト

一つの事例を挙げてみます。世界的に有名な理系大学の名門、マサチューセッツ工科大学(MIT)には、「(ほぼ)何でも作る方法/ How to Make (Almost) Anything」という授業カリキュラムがあります。その思想に端を発し、3D プリンタやレーザープリンタなどを設置し、誰でもデジタルファブリケーションを行える市民のものづくり拠点「FabLab(ファブラボ)」が生まれました。MIT のキャンパスとインドからスタートした「FabLab」は、いま世界中にその輪を拡げています。中でも、インドネシアの古都、ジョグジャカルタにあるFabLab「HONFabLab」は私が訪れたFabLab の中でも非常に刺激的な場所の一つでした。「HONFabLab」は、地域の学生やものづくり好きの人々がたむろする、大学の部室のようなリラックスした雰囲気の空間。そこではオシャレな椅子や3Dプリンティングの模型を作るプロジェクトに交じって、50ドルで義足を作ったり、地域の農業を考えるために蒸留酒を造ったりするなど、社会的な課題にコミットするプロジェクトが行われていたのです。創立者のVenzhaChrist は「どれも面白いからいいだろ?」と笑って案内してくれました。そのとき、「特別なことは何もない。椅子も義足も、みんなが必要なものを作りだすだけ」という彼らのものづくりへの姿勢に心を打たれたんです。「趣味のためのものづくり」といった側面が強い日本とは異なり、彼らの活動の中には社会教育的な意義が自然と内包されているように感じました。

自分が関わる教育の仕事の中でも、大きな災害が起きたときの対処法を、どのように教育すべきかという課題があります。そこで考えているのが、いわゆる従来型の避難訓練だけでなく、「災害発生後72 時間を生き抜くためのサバイバル術」を、遊びの中で身につけていく試みです。例えば寒さから身を守る方法や、空き缶でロウソクを作る方法などは、キャンプ活動の一環のように取り込んでいけば、災害時の心構えやリアルな対応行動を楽しみながら伝えることができるでしょう。それらはアートやデザインといったいわゆる創造活動とは見た目が異なりますが、「未知のものに向き合う姿勢や知恵」といった点において、人が本来持っている野生のクリエイティビティの一つとして捉えることができると思います。

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