絵本の力で食事をもっと楽しく― 遊びから始める、楽しい食育:第3回

先に紹介した「食育すごろく」や「食べものしりとり」などのように参加型のゲームで食に興味を持たせるほかに、食をテーマにした絵本を読み聞かせて、物語の世界から食育へアプローチする方法もあります。
絵本の読み聞かせは、食育だけでなくさまざまな効果があるとされています。食育のテーマからは少し離れてしまいますが、明治大学文学部の齋藤孝教授によると、絵本の読み聞かせは「何より親子のコミュニケーションをスムーズにする」そう。「親と子の間に絵本があることで、距離がぐっと縮まって会話のやりとりが生まれる。子どもは絵本で感じたことを伝えたい、という気持ちを強くしていき、他者と気持ちを分かち合うことができるようになる」としています。
コミュニケーション能力は、今の時代を生きぬくためにとても大切な力です。人の気持ちが分かる、自分の気持ちを上手に伝えられる、それだけで子どもはより生きやすくなります。自分や他者の感情を知覚し、自分の感情をコントロールする力は「EQ」と言われ、教育現場で注目されています。
物語の世界を楽しみながら、自然と食に興味を持ってもらいたいなら、食をテーマにした読み聞かせる絵本を選ぶ際に一番気をつけてほしいのは、食べる楽しみが伝わるかどうか、つまり「おいしそうな本」かということ。残さず毎日食べてほしいからと、あまりごはんを食べない主人公が鬼に怒られる話や、好き嫌いをなくすための教訓めいた話はなるべく避けるのがベターです。
絵本を読み聞かせる目的はまず、食へ関心を持ってもらうこと。子どもにこの絵本はおもしろいと思ってもらうことから始めましょう。まずはじめは、料理が出来上がっていく工程をおいしそうな絵で紹介する本や、前述の「食べものしりとり」のように言葉遊びできるようなものがおすすめです。
Fasuがおすすめする食育絵本

「あっちゃん あがつく あいすくりーむ」「いっちゃん いがつく いちごじゃむ」といったように、五十音順にリズミカルな言葉で食べものをなんと69個も紹介する、軽快な絵本です。アイスクリームたちが歌って踊る様子に、目が釘づけになるはず。

白いごはんが「じゅっじゅっ」と炒められてチャーハンになったり、さらさらのお茶漬けになったりと、いろんなごはんに変身します。「はっふはふ」や「ほっこほこ」など擬音が数多く登場するので、子どもと一緒に言葉遊びを楽しめます。

「お月さまってどんなあじなんだろう」と疑問に思った動物たち。月をかじってみたいゆえのけなげな行動に、子どもたちも感情移入するはず。この絵本に出てくるろう物たちのように、食べられないものの味を想像すると、想像力が豊かに。

サンドイッチを作っていく過程をみずみずしいタッチで描いた一冊。いつものサンドイッチがどのように作られているのかを知ることで、子どものあたり前をあたり前に終わらせない良い機会に。

「ごろごろジュー」「牛肉角切りゴロンゴロン」といったように、調理の際に出る音を再現しているので、読み聞かせにぴったり。子どもの五感を刺激します。カレーはどのようにして作られるのか知識を得ることで、食への興味が広がっていきます。

フレッシュな野菜たちがマラソン大会に出場。にんにくは筋肉ムキムキだったり、かぼちゃは重そうだったり。野菜の特徴を生かしたキャラクターと物語なので、野菜たちに自然と親近感を覚えます。苦手野菜も好きになってくれるかもしれません。

季節の移り変わりと収穫の喜びを描いた一冊。かぼちゃの発芽から開花、そして実がなるまでが、丁寧に描かれています。収穫したかぼちゃをパイやスープ、煮物にして味わう様子からは、家族みんなで食卓を囲むことの喜びが伝わってきます。

土の中に隠れているのは誰かな? 「すっぽーん」の掛け声とともにページをめくると登場するのは、にんじんさんやだいこんさん。ダイナミックな動きで子どもが夢中になるしかけ絵本。色彩豊かなイラストに目を奪われます。

野菜を切ったらどんな種が入っていて、どんな模様をしているのかが、分かりやすく描かれています。食というとも味に意識がいきがちですが、食べものの見た目を知るのも食育にとても大切です。興味をもったら実際に切って見せてあげても。