男の子が男の子を好きになったら?ブラジル発、ピュアで爽快な青春映画『彼の見つめる先に』
人は見た目で9割が決まるというけれど、恋する時も同じなのだろうか?声や匂い、手をつないだ時の感覚、外見以外のことも重なって「あ、この人好きかもしれない」と感じることが多い気がする。
そんなことを思い出させてくれる映画『彼の見つめる先に』が、3月10日から公開される。この作品は、盲目の少年が恋をすること、その相手が男の子であることで、今までにない新鮮さときらめきをもって初恋を描いている。恋の美しさやはかなさ、ワクワク感を、とても健やかに映し出し、見終わった後に「恋っていいなぁ」と改めて思える青春映画だ。
主人公は、ブラジルのサンパウロに住む目が見えない少年レオ。優しいけれど、ちょっと過保護な両親と暮らしている。幼なじみのジョヴァンナがレオの目になり、通学や外出に付き添っている。退屈な日常に飽き飽きしながら、ファーストキスと、アメリカ留学を夢見て日々過ごしている。
ある日、レオのクラスに転校生のガブリエルがやってくる。カーリーヘアでハンサム、クラスでも人気を集める存在になるが、ガブリエルはレオを特別扱いしない。レオを映画に連れて行き、自転車に乗せて出かけ、好きな音楽をかけて踊るなど、普通の友達と同じように誘うのだった。
幼なじみのジョヴァンナ以外と初めて多くの時間を過ごしたレオは、ガブリエルに特別な感情を抱くようになる。一方ジョヴァンナは、自分が必要とされなくなったように感じ、複雑な気持ちになる。
そんな時、クライメイトのカリーナが、ホームパーティーを開いた。ガブリエルはDJとして参加し、レオとジョヴァンナも行くことに。そこで、レオはボトルゲームに参加させられるが、目が見えないことをバカにして、子犬とキスをさせられそうになった。それを救ったのは、ジョヴァンナだった。
事情が分からないレオは、「みんなのせいでキスができなかった!」と怒りをぶつけるが、ガブリエルが酔った勢いでレオにキスをしてきた。そのままガブリエルは立ち去り、ひとり取り残されたレオ。レオの本心も分からず、ジョヴァンナとも仲違いしたまま、3人は課外宿泊キャンプへと向かう。3人の友情は、そしてレオのガブリエルへの思いは、どんな結末を迎えるのか。
ブラジル映画といえば『シティ・オブ・ゴッド』や『セントラル・ステーション』など、貧困などの社会問題が描かれること多いが、この映画は普通のティーンエイジャーが主人公。学校の制服は?授業ってどんな感じ?休日はどんな風に過ごす?どんなパーティーをしている?と、今どきのティーンの日常を垣間見られるのが楽しい。
くっつきそうになったり離れたり、目まぐるしく変わる恋模様も忙しい。嫉妬、優しさ、怒りなどが入り混ざり、恋は一筋縄にはいかない。そして最も気になる「男の子が男の子を好きになったら、どうなるのか」という問題。近頃は、ゲイやバイセクシャルを描く物語も増えているが、苦いラストを迎える場合が多い。
しかしこの作品は、予想外のハッピーエンドで幕を閉じる。男の子が男の子を好きになっても報われない・幸せになれないというありきたりな展開から脱却し、新たなストーリーを力強く導いている。それだけで幸せ、心が洗われる。そんなラストが心地いい映画、『彼の見つめる先に』をぜひ観てみてほしい。