映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』。ティーンの子を持つ親必見の青春映画
インターネット、SNS、オンラインゲーム。自分たちが育った時代とは環境や文化が異なる、今の時代を生きる子どもたち。“デジタルネイティブ” “Z世代”とも呼ばれる子どもたちが今、「何に心を動かされているのか」「日々何を感じているのか」。
そんなティーンの今をありありと映す映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』が公開されている。主人公は、13歳の女の子ケイラ。彼女のため息を凝縮させたような日々を綴った物語は、“ティーンの今を知る指南書”として、またティーン時代を楽しく過ごせなかった親世代や今学校でうまくやれていないZ世代の“許しの映画”として、最高の作品に仕上がっている。
主人公は、8年生(日本でいう中学2年生。アメリカでは小学5年、中学3年、高校4年間の区切りになる)の女の子ケイラ。小太りで顔にはニキビがあり、それを隠すように長い髪を垂らしている。中学最後の一週間を迎えた時、不本意にも「クラスで最も無口な子」に選ばれてしまう。趣味は、SNSで動画をアップすること。しかし見てくれる友達はおらず、クラスメイトとつながるどころか孤独は募るばかりだ。
学年で一番人気の女の子ケネディは、幼馴染ではあるもののケイラに冷たい。ひそかに心を寄せるクラスメイト、エイデンにアプローチしたいが何もできずにいる。そんな中、ケイラに2つの出来事が起こる。
1つ目は、ケネディのバースデーパーティーに呼ばれたこと。親同士が知り合いだったため、ケネディからインスタグラムでメッセージをもらったのだ。友達もおらず自信もないケイラは、パーティーをうまくやり過ごすことができるのか。
2つ目は、1日高校体験。高校に入る前に体験入学をし、高校生とマンツーマンになり、説明を受ける。ケイラの案内役は、明るくて優しい女子高生オリヴィア。太陽のような彼女の存在に救われるが、オリヴィアとの出会いが、予想外の経験をケイラにもたらすことになる。
ストーリーで終始感じるのは、まるでケイラの日常を覗き見しているかのような距離の近さだ。SNSの動画撮影風景から配信された動画を見て、ごく普通の高校生活から父親とのゆるい食事風景を見守る。ベッドで片思いのエイデンの写真にキスしようとするシーンは、こっちが恥ずかしくなるほどだ。派手な事件はないのに、つい見入ってしまうリアルさと体温を感じる。
また、ケイラがパーフェクトでないところも共感できる点だ。映画やドラマでよくある「さえない女の子がイケメンから告白される」とか「地味な子が美しくなっていくシンデレラストーリー」とか、そういった非現実的な要素が一つもない。だからこそ、親世代はリアルにわが子のかけらをケイラに見つけたり、自分の学生時代をケイラに重ねて、胸がきゅんとなってしまうのかもしれない。
一番注目して欲しいのがケイラのパパの存在だ。ケイラはウザくて煙たがっているが、親世代から見れば、これほど愛にあふれた父はいないと思うほど、あたたかくケイラを見守っている。一度だけ、やりすぎた干渉をしてしまったシーンでは爆笑してしまったが、キレたり怒ったりもせず、いつも優しく様子を伺う対応は見習いたい。
ケイラは、高校生のオリヴィアやその友達のライリー、バースデーパーティーで会ったゲイブと出会い、日常を少しだけ変えていく。「パーティーに自分から行く」「自分から連絡先を聞く」ことで、何かが変わった。小さな変化だけれど、ケイラにとっては大きな一歩で大冒険だった。慣れない冒険で心身ともにクタクタになっても、家に帰ればパパの圧倒的な愛があり、ケイラはそれに救われることになる。そしてまた、前を向いて歩き出すのだ。
子どもたちは、自分が身を置く世界=生きる世界すべて、と思いがちだ。親である私たちができることは、「失敗したりつまづいたりしても、人生は続く」「今の世界が苦しくても、別の世界がある」「派手な成功がすべてではなく、自分なりの幸せや発見があることが幸せである」「ありのままを受け入れることで、生きるのが楽になる」ということを、愛をたずさえながら伝えることだと感じた。
『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』は、今の時代を生きる子どもたち、そしてその親のための映画でもある。ぜひ親子で鑑賞して、感想を話し合って見るのも面白いかもしれない。
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