週末は親子であたらしい学びを。
“野外を見る目の解像度を上げる”話題の博物館へ
ここ数年のアウトドアブームに加え、コロナ禍により野外での遊びの需要が高まっています。とはいえ、何となく外へ行っても、やることがなく、あまり面白みが感じられなかった、退屈だったなんていう経験がある家族もいるのでは?
そこでおススメしたいのが、地域の博物館で“野外を見る目の解像度を上げる”方法です。博物館では地域の自然や歴史について、記録展示しており、同じように見える草や石、神社でも違いがあり、それがどのような時間軸空間軸でそこに存在するのかを教えてくれるのです。
関西圏では滋賀県立琵琶湖博物館が2020年10月にリニューアルオープンとなりました。文字通り琵琶湖のほとりに立つ琵琶湖博物館は、琵琶湖の周辺のもの、こと、すべてが対象です。最新の研究結果を反映した展示内容はボリュームたっぷりで、いろいろなことに興味がある子どもの好奇心を刺激し、野外を見る目の解像度を上げるのに、ぴったりです。
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古代の琵琶湖を旅するA展示室
琵琶湖の歴史は400万年以上。一般的に湖は、川から流れ込む土砂により、消えてしまうことが多いのですが、琵琶湖は恵まれた条件で存在し続けており世界有数の古さです。とはいっても、ずっとこの場所にあったわけではなく、元は今よりもう少し南側の三重県にあったのだとか。A展示室には、そういった古い年代のものごとが展示されています。
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まるで絵画のようですが、これはすべて地層の剥ぎ取り標本。積み重なった砂や石のサイズが層によって異なっているので、細かく調査すると琵琶湖が成立していく過程がわかるのです。
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地層には実は砂と石以外にも含まれているものがあります。
「地層には花粉が含まれており、その時代に生えていた植物がわかります。そうすると、気候変動の様子までわかってきます。植物は気温や降水量によって生える種類が変わるので、記録になるんです」と、教えてくれたのは学芸員の林竜馬さん。地面の中には歴史が詰まっていたのですね。
また、その動物自体の骨の化石などが見つからなくても、その生き物が生きていたことがわかる証拠になるのが足跡なのだそう。
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「琵琶湖周辺ではワニの足跡が見つかっています。化石はもちろん大事ですが、足跡があると生きていた時の暮らしぶりがわかるので、大事な痕跡です」(林さん)
日本にワニがいたとはびっくりしてしまいますね。足跡がついたベンチも設置してあるので、自分の手のサイズと比較してみてくださいね。
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また、A展示室でひときわ目を引くのが、ツダンスキ―ゾウの半身半骨の立体模型。こちらは中国で発掘された古代のゾウの全身骨格化石の左半身に生体を復元した、世界初の展示方法なのだそうです。このツダンスキ―ゾウの近縁種である「ミエゾウ」が古琵琶湖の周辺にいたことがわかっています。ワニやゾウが湖畔を闊歩していたと考えると、今まで見ていた琵琶湖の風景が違ったものに見えてきませんか。
琵琶湖に寄り添って生活してきた人の様子がわかるB展示室
大きな龍が出迎えるB展示室。琵琶湖周辺では龍が信仰されていたことにちなみ、この展示室の案内役をしています。
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A展示室より時代が進み、2万年前から今までの琵琶湖の様子を展示しているB展示室では、人と琵琶湖の関わりが中心になってきます。
狩猟採取の生活を行っていたことを解説する展示では、ジオラマの中に入ったかのような写真を撮影できるフォトスポットが新設されました。石斧で木を切り倒したり、弓矢でシカを狙ったりする写真を撮ることができます。
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見るだけでなく、主体的に展示物に関わる展示方法で、退屈せず理解を深めることができるように設計されています。
また、B展示室の中でもとりわけ大きい展示物が、かつて琵琶湖を疾走していた丸子舟です。今回のリニューアルではユニバーサルデザインを採用。以前は通路から丸子舟まであった段差を解消し、ベビーカーや車いすでもそばに行って、見ることができるようになっています。
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江戸時代を中心に、水運に利用されていた丸子船です。帆船なので、本来は帆が立つのですが、スペースの関係上、立てられません。そこでリニューアルで導入されたAR(拡張現実)技術のタブレットにかざすと、帆柱を立てて湖面に浮かぶ丸子船の姿が見られます。
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設置してあるタブレット端末や、アプリを通して自分のスマートフォンをかざすと、帆が立った様子が再現されます。同時に、浮世絵を元にした江戸時代の琵琶湖周辺の風景も浮かび上がり、当時の情景を味わうことができます。
琵琶湖と人との距離が今までより近かった時代があったことが、体感を通して理解できる展示を見てから、館外の琵琶湖を眺めると、いつもより、立体的な琵琶湖が見えてくるのではないでしょうか。
生き物がいる珍しい博物館
琵琶湖博物館最大の特徴は大面積の水族展示スペースがあること。文字が多めの展示室に飽きたお子さんでもリラックスして展示を楽しむことができます。
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琵琶湖の固有種であるビワコオオナマズやビワマスを始めとした淡水魚が数多く展示されており、淡水では国内最大級を誇ります。最近の環境問題のトピックである外来種も展示。
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「展示されている魚以外にも、本来の生息地で減少している淡水魚を飼育し、維持する施設も持っています。もし本来の生息地での絶滅が確認されても、その血筋が飼育されていれば完全に種が失われてしまうことを避けられます」と中井克樹学芸員。生息地の環境改善が進めば、放流して復活させられる可能性があり、大切な施設です。
外来種については、レストランも要チェック。琵琶湖外来魚であるブラックバスを利用した天丼をいただくことができますよ。
ディスカバリールームに帰っていこう
広い展示室を一回りしてすべての展示を見終わっても、実はここは入り口でしかありません。
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高橋啓一館長によると「琵琶湖博物館は琵琶湖という広大なフィールドに、出かけるための取り掛かりのための施設」なのです。
琵琶湖周辺は緑地や散策できる道が多く整備されています。展示により、解像度の上がった目で野外へでかけ、「これは博物館で見た!」という発見の楽しみを味わってください。そして、「これは何?」という疑問ができたら、再び博物館へ。1階のおとなのディスカバリールームへ行きましょう。
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大人のディスカバリールームは、アンティークな骨董屋さんのような雰囲気が素敵な展示・資料室です。図鑑を手に取って自分で調べることもできますし、常駐している学芸員に質問することも可能です。こちらで「そういうことだったのか!」と疑問が解消出来たら、“自然を見る目がワンランクアップ”したということ。きっと野外で退屈ということは減っていくはずです。
親も子も楽しんでいるうちに、好奇心を刺激され野外を見る解像度が上がっていく滋賀県立琵琶湖博物館。ぜひ琵琶湖の散策と共に楽しんでください。
新型コロナウイルス感染症予防のために、一部の展示設備に制限がある場合があります。
2020年10月10日より、入館が事前予約制になりました。公式サイトの予約ページから、予約を行ってください。