東京都現代美術館|遊びを通して、アートを感じてみよう!少女と巡る「あそびのじかん」
サーフィンとバレエが好きな9歳の女の子、アクアは、今回生まれて初めて美術館を訪ねた。「どんなところだろう?」と想像を膨らませながら、東京都現代美術館で開催中の展覧会「あそびのじかん」に足を踏み入れると、まず目の前に現れたのは美術館の高い天井に届くほどの巨大なタンスの壁!「 受験競争のプレッシャーを表現した『受験の壁』という作品」と解説を聞くも、まだ“ プレッシャー”や“ 受験” といったキーワードにはピンと来ていない様子。「今、一番頑張っているバレエは、大変な時もあるけど、新しいことができるようになると嬉しい」と話すアクアは、「受験の壁」にも楽しそうにチャレンジする。
その次には、 壁に国語や歴史などさまざまな問題が書かれていたり、数式を解くとドアが開く迷路が待っている。「受験競争」の後に待ち受ける人生を表現する迷路の中を、アクアは笑顔で駆け抜ける。
このように観るだけでなく、遊びながらアートに触れる展覧会はまだまだ続く。例えば、「ポジティブな呪いのつみき」という作品は、「たくさんの人と話せば」「あなただけがあなただから」「夢の叶う確率が1%あがる」「あなたは元気だ」など、さまざまな言葉が書かれた積み木を自由に組み合わせ、自然と心がポジティブな気持ちになる作品だ。アーティスト、タノタイガの顔のお面が壁一面に並ぶインスタレーション「タノニマス」は、来場者がワークショップで思い思いにデコレーションを施し、会期中にどんどん多様性を獲得していく参加型作品となっている。
「学校の授業の中で美術が特に好き」と言うアクアもお面の装飾に挑戦することに。素早く、そして丁寧に白い毛糸で髪の毛を、ドット柄やカラフルな布でリボンを作ってお面に貼り付け、メイクまで施し、「すぐにどういうデコレーションにするか浮かんだから全然迷わなかった」と話す。
初めての美術館は、「もっと遊びたいと思った」と言うアクアが、特に気に入った作品は「笑う祭壇」。作品の説明をお願いすると、「小さな台の上にボタンを乗せるゲーム。まわりに線が引かれていて、それは絵のキャンバス。失敗して落ちたボタンが絵になる」と、失敗は決してネガティブな側面だけではないことを教えてくれた。作品の中でも、たくさんの種類のボタンの中から、ゴールドや黒色のきれいなボタンを探すのに夢中になったという。
将来の夢は「ファッションデザイナー」で、その理由は「自分の好きなものが作れるから!」と目を輝かせて話すアクア。これから先の未来には、手の中でキラキラ輝くボタンのように、美しい出来事がたくさん彼女を待ち受けている。失敗も成功に変えながら、彼女にしか描けない絵を描いていくのだろう。