DATE 2021.11.11

ニューファミリーの必須科目。わかりやすく解説!「SDGs」の基本のキを解説

今では当たり前のように使用されている「SDGs」という言葉。しかし中には「SDGsについて正しく説明できる自信がない」という人もいるのでは?そこで今回は、今更聞けない「SDGs」にまつわる疑問を、上智大学 地球環境学研究科の織朱實教授に聞いた。

【特集】家族で考えるサステナブルな生活〜NEW SUSTAINABLE LIFE FOR NEW FAMILY〜

SDGsの目標達成の期限まで、あと9年。子供たちの未来を守るために、ファミリーが実践すべきサステナブルな暮らしのあり方をFasuでは総力取材。今更聞けないSDGsの真の意味や、Z世代が実践するサステナブルアクション、注目のサステナブルトレンドまで一挙ご紹介。

至る所で当たり前のように「SDGs」という言葉が使われ、小学校でもSDGsをテーマにした授業が行われるようになった今。大人も子供もSDGsについて語ることが常識として広まりつつある中で、実は「SDGs=環境問題のこと?」と曖昧に理解している人や、「企業や国が取り組むプロジェクトで、自分には関係ない」と感じている人も多いのではないだろうか。

 

SDGsが取り上げる17項目は、環境問題だけでなく、ジェンダー問題や街づくり、教育など多岐に渡り、その一つひとつが遠い世界の話に思えて、実は私たちの暮らしに直結している身近な問題ばかり。そしてそれらは全て、子供たちの未来にも大きな影響を与えるこそ、ファミリーは率先してアクションを起こしていく必要があるはずだ。

 

そこで今こそSDGsについて正しい理解を深めるべく、SDGsにまつわる素朴な疑問や基本的な考えについて、上智大学 地球環境学研究科の教授、織朱實先生に解説してもらった。

 

SDGsについて今更聞けない……と思っている人も、ぜひここから学びのスタートを!

 

SDGsの素朴な疑問に織先生がアンサー!

Q. SDGsの目標が17個もあるのはどうして?

A. SDGsの17項目を見るとき、多くの人が「他国の問題」と他人事に捉えたり、それぞれを別個の問題として捉えようとすると思います。でも実は17個は全てが一続きにつながっており、どれも世界中の誰もが関わる問題です

例えば目標の1つ目、『貧困をなくそう』は、本当にアフリカなど途上国だけの問題でしょうか?実は、日本の子どもの相対的貧困(=国内で比較した中で貧しい状態のこと)は、OECD加盟国のG7の中でも、2番目に高い貧困率となっています。つまり貧困にも種類があり、視点を変えるだけでとても身近な問題であることに気づきます。そして貧困問題は教育格差を生むので、途上国でも先進国でも、『質の高い教育をみんなに』という4つ目の目標に繋がっていくことがわかります。

先進国がつくる責任・つかう責任を果たさず大量生産・大量消費の暮らしを続ければ、気候変動や海洋汚染が進みます。その結果、世界各地で自然災害が発生し、教育の機会が失われたり、貧困に陥ったり、犯罪や紛争が生まれる恐れもあります。特に発展途上国への影響は甚大です。このようにSDGsの17項目は、それぞれの問題が繋がりあい、世界中で直面してる問題だと大きな視座から認識することが大切です。

 

Q. 「世界で達成する目標」「飢餓」「貧困」「気候変動」など、SDGsのキーワードが壮大すぎて、個人レベルの行動が本当に役立つのか疑問です……。個人よりも企業の取り組みの方が重要ではないのでしょうか?

たしかに「自分ひとりがやってもどれだけの意味があるんだろう」と途方に暮れますよね。例えば11番目の目標である「住み続けられるまちづくりを」を挙げてみましょう。
「そんな事言われても国や自治体がやってくれないと」と思ってしまう人も少なくないと思います。けれど、実際にこんな例があります。

 

徳島にある上勝町は、ゴミの分類を13種類45分別と設定し、町民がペットボトルや容器だけではなく、歯ブラシ、サランラップ、紙レシートすらも細かく分別して出す、ごみゼロ(ゼロウェイスト)の取り組みで有名です。でも、なぜごみゼロに取り組むようになったかという背景には、自治体に埋め立て処分や焼却処理に使う予算がなく、他の自治体に焼却を委託しているような状況がありました。そのため町民の協力を得ながら、ごみをそもそも排出しない、自分たちで細かく分類してもらうことにより、ごみ処理費用をかけないというシステムを作っていったのです。綺麗に分別されたごみは、リサイクル原料として売却もされています。
町民一人ひとりの行動のおかげで、上勝町はゼロウェイストの町として海外からも注目され、観光客や視察が増え、若い移住者も現れ、新しい町起こしが実現できる……と、結果的に環境にも町民にも自治体にも、WIN-WINな状況が生まれました
このように個人レベルの行動が、連鎖して大きな力となり、環境にも社会にも影響を与えられることもあるのです。

(c) Image Source /amanaimages
(c) Image Source /amanaimages

Q. 最近よく聞く「プラゴミ問題」。そんなに地球に負荷をかけるならばプラスチックは絶対に使わない方がいいのでしょうか?

A. SDGsの問題について考えるとき、一方向的な解釈のまま議論が進んでいるケースがよくあるように感じます。プラスチック問題もその代表的な例ですね。

SDGsの項目の中でプラスチック問題を話し合うとき、海洋プラスチックや焼却時のCO2問題(温暖化問題)の観点から、『プラスチックは使わない方がいい』という見方があります。しかし一方で、プラスチック製の食品ラップや保存容器があることで、フードロスを減らせることも事実です。そうすると一概に『プラスチック=悪』とは言い切れないと思います。つまり、プラスチックを使うべきところで使い、使わなくても良いところには使わない、という選択が重要です。

 

また、プラスチックの焼却時に出る熱を利用し、その電気を新たなエネルギーとして発電所や温水施設などで再利用できる熱回収の方法もあります。これをサーマルリサイクルと言うのですが、焼却であっても熱回収による発電の再利用までセットにすることで、同じく温暖化の原因となる石炭や石油などによる火力発電の割合を減らせるという考えもあるんです。

このようにSDGsの目的達成においては、常に一方を追求すると、もう一方に歪みが出るトレードオフ(二律背反)の関係を考えていかなければなりません。物事には多様な面があるということを理解した上で、SDGsについて俯瞰して考えることが大切です。

 

Q. 最近は子どもも学校などでSDGsについて勉強しているようです。家庭ではどのようにSDGsについて話すといいでしょうか?

A. つい親は我が子に対して、自らの問題意識を押し付けてしまうこともありますよね。ただそうすると柔かな頭と心を持つ子供は、親の考えが正義であり、正しいと思い込んでしまいます

多様性が重視される今の時代においては、SDGsに対しても様々な考えがあって当然です。厳しく行動に移す人もいれば、自分のできる限りで取り組みたい人、やっても意味がない(やりたくない)と考える人だっているでしょう。なのでまずは家族で、17の目標についてその背景や実態について理解をすること。

その上で、色んな意見があることを理解しながら、自分はどう行動を起こすのか、それぞれが考えを出していくことが大切ではないでしょうか。

 

(c) Peter Muller/Cultura / Image Source RF /amanaimages
(c) Peter Muller/Cultura / Image Source RF /amanaimages

Q. 子供がSDGsを学ぶことがきっかけで、地球の将来を心配して暗い顔をしています。現実を見せることが本当に正解なのか悩ましいです。

A. たしかに、私たちが今抱えている課題は、 大人たちが作り上げた負の遺産とも言えます。その意味では、大人たちが率先して17の目標について考え、子供たちの未来を守るためにも取り組むのは必要不可欠といえます。

ただ、SDGsの目標は、誰もが幸福に生きられる世界をこの先ずっと持続させていくため。大きな視点から見ると、子供たちも同様に、またその下の世代の子どもたちへと未来のバトンを繋ぐ存在です。なのでSDGsに関しては、人類が取り組むべき課題として、大人も子供も関係なくみんなで学び・行動していくという姿勢がどうしても必要になってきます。

悲観的な側面ばかりを見せるのではなく「どうしたらもっと良くなるのか」といった前向きな考え方が子供とシェアできるといいですよね。実は、SDGsについて学べるカードゲームも今はたくさん存在していて、私のゼミの授業では、一般社団法人イマココラボの「2030 SDGs」というゲームを使った学びを実践しています。カードゲームをしていると、SDGsの17の目標が、どう繋がり合っているのかが良く分かるんですよ。

例えば、「2030 SDGs」には「児童労働」のカードがあるんですが、児童労働は少ない投資で大きな見返りが得られるカードなんですね。じゃあ、自分たちが環境保護のプロジェクトを実施しようとするときに「お金が必要だから、本当は使いたくないけど児童労働カードを使うのか?」と、皆で悩むわけです。そんなふうに17の目標の繋がりを認識しながら、SDGsを達成するためにどうしたら良いのかを考えるゲームです。

子供たちもゲームなら身近で楽しいと感じられると思うので、遊びながらSDGsの意味を理解し、ポジティブに解決できる思考力や行動力が自然と身につくようになると良いですね。

 

>>【織先生の解説第二弾】「ファミリーとプラスチックの新しい付き合い方」も近日公開予定!

 

上智大学 地球環境学研究科 教授
織 朱實(おり あけみ)

専門は環境法。環境法全般(大気、水質、土壌、地球温暖化、生物多様性等)を対象とした研究を行ない、容器包装リサイクル法などを制定する国の審議会委員や自治体の廃棄物審議会の委員を務める。SDGs関連のワークショップを開催し、カードゲームの普及を行っている。

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