DATE 2019.05.24

第29回:tupera tupera 中川敦子より
子どもたちの創作意欲のために、大人がするたった2つのこと。

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。2月からは、人気絵本作家である〈tupera tupera〉の中川敦子さんとサルビアを主宰するデザイナーのセキユリヲさんによる往復書簡をお届けします。

中川敦子さんからセキユリヲさんへ。

 

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セキユリヲさま

 

こんにちは。
前回お手紙をいただいてからお返事を書く間に、時代は平成から令和に変わり、怒涛の10連休!東京から友人家族がワイワイと遊びに来てくれたり、世の中の祝賀ムードに流されたりで、なんだかお正月のような気分で、ここ数日を過ごしていました。連休最終日、明日から現実に戻れるかドキドキしながら、今この手紙を書いています。

 

セキさんがのぞき見してみたいと言ってくれた、tupera家の「つくる時間」。うーん、みんなに期待されるんですが……本当に正直なところ、特別な事は何もできていないんですよ。親である私たちは、毎日朝から晩まで自分たちの制作をやって、創作意欲は満たされているので(笑)子どものために、さらに何かを作ってあげようという気持ちになれず……。それでもまあ親の背中を見てかどうかはわかりませんが、子ども達もやっぱり、作ったり描いたりすることは好きみたい。連休中もいつもより家にいる時間が長かったので、工作したり絵を描いたり、ちょこちょことやっていましたよ。

 

上の娘は、細い線で小さい絵を描くのが好きで、色も淡いパステル調。最近はノートに少女マンガのようなものも描いているようです。私は割とゴリゴリ描くタイプなので、もっと大胆に太い線で描いたら! なんて、最初は口出しをしていたんですが、娘が作り出す世界観をずっと見てたら、それが個性なんだなと気がつきました。大人は、勢いがある元気な作品のほうが子どもらしくていいと、安直に判断してしまいがちですが、みんなそれぞれですよね。

 

下の息子は、空き箱を使って工作したり、レゴでオリジナルのロボを作ったりするのが好きです。カッターでくり抜いたり、テープで固定したり、お願いされれば手伝うことはありますが、基本は放ったらかし。「いいのができたら見せてね〜。期待してるよ!」と言って、その間に別の家事や仕事をしていると「できた、できた!」と見せに来てくれます。時々、予想以上に面白い作品ができあがったりするので「うお〜、めちゃめちゃカッコいい!! もっと沢山シリーズで作って、展覧会やろうよ!」なんて言ってさらにたきつけると、まだまだ素直な息子は「よし!いっぱい作ってくるね〜」と笑顔でまた作りにいきます。

 

tupera tupera のワークショップの考え方もそうなのですが、大人がしてあげるべき事は、1. 道具を子どもが使いたい時に自分ですぐ出してこれる場所に揃えておくこと。2. 空き箱や梱包材など材料になりそうなものを捨てずにとっておくこと。このふたつぐらいだと思っています。それさえあれば、あとはちょっときっかけを与えたり、テンションが上がるように盛り上げたりすれば、子ども達は勝手にいきいきと創作しはじめますよね。

 

tupera家の「つくる時間」でよくあるのは、子ども達が作っている横で、父ちゃん(亀山)が負けじと自分の作品を作って、いいのが出来ると子ども達に自慢するというパターンです。

 

セキさんがお手紙に書いてくれた「小さいころ、工作をしていると、あとで生きてくる」という発言は、「そんな真面目なことを言ったかなあ…」と本人は全く覚えていませんでしたが、tupera tuperaとしては、モノを作ってコミュニケーションするって楽しいから、みんなもやってみてね。オススメするよ!というくらいの気分ではあります。

 

話は変わりますが、セキさんのお手紙の中の、お子さんたちに産みのお母さんのことをオープンに伝えているというお話、正直びっくりしました。でも、確かに何かそれを隠すようにして生活しているよりも、最初から、ありのままの形を伝えるのが一番自然なことですね。お子さんたちも、きっとそういう想いをしっかり感じ取りながら成長していくんだろうなと思いました。でも、養子という形だけが特別なのではなく、親子の関係の中で、例えば性教育とか恋愛とか友達関係の悩みとか……どこまでオープンに話せるかって、なかなか難しいことですよね。今、上の娘が思春期に突入したところなので、ちょうど実感しているところです。家族でTVドラマを見ていてラブシーンになるとお父さんがトイレに立つみたいな、定番の風景が我が家でも展開されています(笑)

 

セキさんは、思春期の頃はどうでしたか?その時、抱えてた気持ちとか覚えていることはありますか?今、娘と一番ぶつかっているのは、ファッションのこと。子どもの趣味や選択も尊重してあげるべきだとわかっているし、自分も小中高のアルバムは恥ずかしくて見られない格好ばかりなのに、自分の今の価値観を曲げられず…。でも、私の服で彼女が欲しいというものをあげたり、一緒に買い物へ行ったり。親子で楽しんでもいます。娘と服をシェアするなんて、まだまだ先だと思っていたけど、あっという間です。

 

成長したといえば、最近、家族で「カロム」という指ではじくビリヤードみたいな木製ゲームをよくやるのですが(オススメですよ!)、最初はぜんぜん出来なかった息子にも抜かされて、今では私が一番ヘタになってしまいました。この間もゲームで負けて、疲れたなあとボンヤリしていたら、息子に肩を叩かれ「ママ、気持ちはわかるよ!練習すれば大丈夫。」って励まされ、思わず笑っちゃいました。

 

体も心も、毎日成長し変わっていく子ども達に負けないよう、自分も少しは成長しながら、いい距離感で向き合っていける母でありたいです。

ははとハハの往復書簡 第29回

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次回更新は6/7(金)の予定です。salvia デザイナーのセキユリヲさんからのお返事です。

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