食べることを考える絵本
一匹の魚が捕まえられて夕食のおかずになるお話『いわしくん』。
主人公は日本の海で生まれた一匹のいわし。大海を泳いでいたところ、漁船に捕獲され、港に運ばれ、スーパーに並べられ、買われて、焼かれて、食べられる……。とてもシンプルに、ひと見開きずつの展開で一匹のいわしがどうやって食卓までやってくるのかが描かれています。そして、食べられたあとのいわしは、どうなるのか。いわしの肉は元気な男の子の体の一部となり、男の子と一緒にプールを泳ぎます。食べることは「命をいただくこと」そして「命をつなぐこと」。だけど、それを難しい言葉で説明するのではなく、プールでいきいきした表情で泳ぐ姿を通し、子どもたちの感覚に訴えかけることに成功しているとても面白い絵本です。文章も短く、読みやすいので3、4歳から小学校高学年までさまざまな読み方ができる1冊です。
「ぼく」が生きるために必要なこと『しんでくれた』。
谷川俊太郎さんの詩「しんでくれた」から生まれた絵本です。衝撃的なタイトルと表紙に描かれたハンバーグは一見なんのつながりもないようにみえます。しかし、扉を開くと現れるのは、真っ直ぐにこちらを見据えた1頭の「うし」。谷川さんの詩は語りかけます。「うし しんでくれた ぼくのために そいではんばーぐになった ありがとう うし」と。「しんでくれた」のは「うし」だけではありません。豚も鳥も魚も、みんな「ぼく」が食べるために「しんでくれてる」。でも、ぼくは誰かのためにしんでやることはできない。それなら「ぼく」は、どう感じて、どう食べて、どう生きるのか。塚本やすしさんによる絵は、とても暖かく、力強く、食べることの先にある大切なことを、強く生きる意味を、詩とともに教えてくれます。
『ごはんは おいしい』。
日本人にとって欠かせない主食と言えば、お米です。この絵本では、そんなおいしいお米がどうやってつくられるのかを写真家・鈴木理策さんの美しい写真と詩人・ぱく きょんみさんの優しい詩を通して教えてくれます。おばあちゃんが教えてくれる、ごはんのおはなし。春に植えられた「あかちゃんいね」は、夏には「いちめんの あおい たんぼ」になり、秋にはおばあちゃんがわくわくした「いねかり」が、そして冬には「かたい つちに かえって」春を待ちます。1年をかけ、巡る季節をこえて生まれてくるお米の話を読んだあとに、ページいっぱいに広がるつやつやでほわほわのおいしそうなごはんの写真。大好きなごはん。季節を巡ってできたごはん。残さずちゃんと食べたいな。自然とそう思わせてくれる、素敵な1冊です。