大人にもおすすめ【実話】の絵本。知っておきたい大切なこととは?
国境を越えて旅する親子の物語『ジャーニー 国境をこえて』。
2017年にアムネスティCILIP特別賞を受賞したことをはじめ、世界20ヶ国語に翻訳され、各国で名だたる賞を受賞している絵本です。きっかけは、イタリアで出会った難民センターの少女たちだそうです。彼女たちの旅の記憶に衝撃をうけた著者は、さまざまな国のいろんな人から話を聞き、それを1冊の絵本にまとめました。戦争がはじまり、自分たちの故郷にいられなくなる。そこから長い、長い、旅がはじまります。その旅は、もちろん楽しいものではなく、不安や恐怖、悲しみがつきまといます。よその国へ無事、辿り着けるのか、そして、そこに幸せはあるのか、と。美しいグラフィックで子どもたちも一緒に読める簡単なテキストで綴られています。しかし、真っ暗闇の森、国境を越える場面などその迫力は、ずしりと胸に響きます。ニュースで日々流れる「移民」や「難民」のこと。その人たちすべてにこんな旅があるのです。
テディベアが教えてくれること『オットー 戦火をくぐったテディベア』。
『すてきなさんにんぐみ』などで知られるトミー・ウンゲラーの1冊です。オットーはドイツの工場で作られたテディベア。デビッドという少年の誕生日の贈り物になり、デビッドとその親友のオスカーと3人でいろんなおかしないたずらを仕掛けて楽しくすごしていました。しかし、ユダヤ人であるデビッドは両親とともに強制収容所におくられてしまい……。「戦争」により翻弄された人々の姿を1匹のテディベアの視点で描きます。戦争はいろいろな人の人生や運命を変えてしまう。その無情さを、この愛らしい染みのついた“オットー”を通して伝えてくれるようです。しかし、この実話をもとにした物語は最後に信じられない奇跡を起こしてくれます。それは、温かでささやかな生きることへの「希望」を私たちに与えてくれます。
子どもたちの小さな抵抗を描く『わたしたちだけのときは』。
1800年代に行われたカナダの先住民族の「同化政策」をテーマにした絵本です。おばあちゃんと孫娘の対話の形で、おばあちゃんがかつて小さな少女だったころ、自分の身に起きた悲しい現実を語ります。おばあちゃんは小さいころ、家族からひきはなされ、寄宿学校に入れられ、どの子も同じ寂しい色をした制服を着せられ、髪を短く切られ、自分たちの言葉を話すことも禁じられていました。でも、幼いおばあちゃんは、それでも自分の中にある誇りや自由への想いを忘れずにいました。好きな色のスカートを履いて、髪を美しく長く伸ばし、自分たちの言葉を話す。今の私たちにとっては、すべて当たり前のことで、尊重されるべきことです。それが叶わない時代や偏見、差別があったことを伝えてくれる大切な1冊です。