美しい絵で楽しむ、はじめての雪絵本【2歳以上におすすめ】
雪をまちわびる子ども心を鮮やかに描き出す『ゆき』。
夜が明けるほんの一瞬のきらめきを描いた名作絵本『よあけ』の作者であるユリ・シュルヴィッツが手がけた、こちらも自然の変化を見事に切り取った美しい雪の絵本です。灰色のどんよりとした空。気がつくとひとひらの雪が舞い降りてきます。男の子は「雪がふってきた!」と大喜び。でも、街の大人たちは「どうってことない」「すぐにとけるわ」と冷めた様子。でも、雪は、あとからあとからと降ってきて……。街に静かに降る雪は徐々に増えていき、グレーな空も、東欧のおとぎ話のような不思議な街の家々も、白く白く染まっていきます。黒や茶の重たいコートを着た不機嫌な大人たちと対比するように男の子は、赤いチェックの帽子と水色のマフラーと手袋に緑のコート。空想の世界の仲間たちと白い雪の中で生き生きとはしゃぐ姿が印象的。やがて空も澄み切った青に。爽やかな読後感で繰り返し読みたくなります。
ゆっくりとした時間に読んであげたい『しろいゆき あかるいゆき』。
雪が降るまでの予兆から、降って積もり、それが春の訪れとともに溶けてなくなるまで。アルビン・トレッセルトの詩的なテキストに丁寧な翻訳をつけたのは作家の江國香織。物語の舞台は、トレッセルトの生まれ故郷であるニュージャージー州の田舎町。「ごきげんなライオン」シリーズや「がちょうのペチューニア」シリーズのロジャー・デュボアザンによる挿画は、そんな田舎で暮らす人々やそこにある暮らしを、暖かさとセンスが光る独特のタッチで描き出します。美しい絵と言葉は、読み手に雪の感触まで想起させてくれます。大人もじっくり味わえる、特別な雪の絵本です。
とらのこ“とらた”と一緒に遊びに出かける『はじめてのゆき』。
童話『ももいろのきりん』などでおなじみの中川李枝子と中川宗弥のコンビによる1冊。「とらのことらた」を主人公にしたお話の中の1冊で、初めての雪にびっくりしながらも、心弾ませ、雪に挑んでいくとらたの1日を描きます。中川宗弥の挿絵がとにかく楽しいです。1本の線を引き、その余白を使って雪を表現していく大胆さ。ゆるい線で描かれた、愛嬌たっぷりのとらたやゆきだるまに、しみじみ心を癒されます。そして、晴れ渡った空の広がりを1ページだけ真っ青にぬりつぶし、とてもシンプルで効果的に表現しているのもユニーク。中川李枝子による、実に子どもらしい、みずみずしい物語も何度読んでも楽しいもの。タイトルにある通り、初めての雪の絵本としておすすめしたい1冊です。