DATE 2020.10.22

【LONDON/From SHIHO】ロンドン発シホのサスティナ ジャーナル Vol.6

コロナ禍のリフレッシュタイムに訪れたのは、ロンドンで今いちばんホットと言われるホテル「Birch (バーチ)」。サスティナブルな一面を持ちながら、最も新しくスタイリッシュな話題のスポットをSHIHOがリポート。

こんにちは、シホです。

 

イギリスの10月はほぼ冬並みの寒さ。晴れると空気の澄んだ気持ち良い1日となりますが、雨も多く、日本人の思い描く「秋」はほんの一瞬で過ぎ去ります。寒がりの私は、朝の起き抜けと日の落ちた夜には既にヒーターのスイッチをON。

 

9月以降徐々に部分的ロックダウン(感染者数の高いエリアに限って規制を厳しくする)が始まり、10月に入るとさらに深刻化していたコロナですが、ちょうどこの原稿を仕上げていた10月半ばには、ロンドンを含む8つのエリアで規制を1段階厳しくするとの発表が。

最初のロックダウンが明けた6月以降、マスクの着用やハンドサニタイザーの設置、入店人数の制限など、それぞれが規制を守ってきていたはずでしたが、空気が乾燥してきたとたんに感染者数が跳ね上がってしまいました。

 

 

冬を目前に心配が絶えませんが、“with コロナ”の時代に前向きでいるためにはリフレッシュタイムが不可欠。夏のホリデーにも出られなかった分、家族3人で思い切って旅に出ました。

滞在先は、感度が高くていつも頼りになるイギリス人の親友Pippaが教えてくれた素敵なホテル、「Birch(バーチ )」

 

「バーチ」はオープンしてわずか2ヶ月半。

2020年8月にオープンしたこのホテルの場所はロンドンの北側、ハートフォードシャー州のチェスハントという街。

もともとは貴族のお屋敷だったと言う厳かな煉瓦作りの建物で、その広さは東京ドーム約4.7個分。このビジネスのディレクションにはかつて「エース ホテル ロンドン」のマネージャーだったクリス・ペン氏が参加し、ごく普通のホテルとして運営されていたマナーハウス(昔の貴族の邸宅の総称)を約11億5千万円という莫大な予算を投じてリニューアル。「都会の喧騒から逃れてリラックスできる宿泊施設」を目指したという、今ロンドンで1番ホットなホテルです。

 

ロンドンコミューターベルトと呼ばれるロンドン通勤圏内のエリアの1つ、ウォルサムフォレストという緑豊かな森に囲まれたこの土地は空気も美味しく、ロンドン市内からも電車+タクシーで約30〜40分、車で約40〜50分の距離。 イーストロンドンからはさらに近距離とあって、いかにも“イーストロンドナー”なノマドワーカー風の人から、さらにはファッショナブルなカップルや親子連れまで 多種多様な人々が集っていました。

 

ちなみに館内では、飲食をするとき以外はゲストもスタッフもマスクを着用。館内の至る所にハンドサニタイザーが設置され、こまめな清掃が入り、コロナ対策もバッチリ。

 

エントランスホールの美しいアール階段。
エントランス脇にあるライブラリールーム。

「バーチ」はただの宿泊施設に留まらず、朝から夜まで映画が放映されるシネマルーム、ファーム、フィットネス用の別館、カフェにベーカリー、2つのレストランなどの多くの施設と140の客室で構成されています。

客室内の様子。シンプルな壁の色使いがモダンさを引き立てています。内装デザインは、洗練されたアーバンスタイルで定評のある建築事務所、「Red Deer」によるもの。

そしてこのホテルの一番のお楽しみは、まるで「フェスティバルを楽しむようにゲストが参加できる」という、体験・学習型の数々のイベント。

ウェルネス、食、音楽、陶芸、パン教室など毎日参加できる定番のクラスから、金継ぎやリース作り、アロマキャンドル作りなどのワークショップほか趣向を凝らしたイベントが盛りだくさんです。

 

食べ物もヘルシーかつ美味しいラインナップ。マーマイトが苦手な私でも美味しく食べられた、マーマイト&チーズのペストリーと、手作りのアーモンドバターと桃のジャムが絶品のシリアルは欠かさず食べて欲しいオススメメニュー。パンは館内にあるベーカリーで毎朝作られている焼きたてのものが食べられます。そしてその毎朝のパン作りも、子供も含めたゲストが参加できるワークショップのひとつ!

館内のベーカリーで毎朝焼かれている、サクサクのクロワッサンをパクリ!

一般的なマナーハウスでの宿泊は、その建物の歴史的価値なども相まって騒がしい子供は敬遠されてしまいがちですが、ここではキッズも大ウェルカム。

子供向けのワークショップ、建物の周囲にも子供と楽しめる施設…… 鶏や豚、羊のいるファームやハーブガーデン、ハンモックのある広大な庭。

そしてそれぞれのイベントの内容は、大人向けも子供向けも洗練されていてモダンでありながら、どこかに温もりが感じられます。

ビーチにあるようなチェアと大きなビーンバッグでくつろげるシネマルーム。朝は子供向け、午後から夜には大人向けの映画が観られる。

朝のシネマルームでは子供向けの映画を流してくれているので、夫は飲み物を持ち込んで隣でゴロゴロ……。私はその間に滞在中60分のヨガクラスと、45分間の瞑想のクラスに参加して、身も心もスッキリ。

瞑想クラスでは「どんなに子育てで忙しい親でも、1日5分…朝2.5分、夜2.5分だけでいいと言われれば、時間は確保できるでしょう?」という瞑想クラスでのお言葉を受け、早速毎日実践中です。ちなみにゲストであれば、このヨガと瞑想のクラスの参加は無料! 午後にはみんなで敷地内にある庭園とファームを散歩しました。 通常のホテルでは見られない光景に娘も大はしゃぎ。

敷地内の庭園。
ファームの羊たち。

2日目の朝。この日、このホテルがイギリスで長年支持されている新聞『サンデー タイムス』の“2020年 ホテル・オブ・ザ・イヤー”に選ばれたとのことで、朝からお祝いムード。開業してたった2ヶ月での受賞でしたが、納得の結果です。

 

この日は“ヤング・アドベンチャー・クラブ”という子供向けのプログラムに参加。 子供が5歳以上ならば親が引率せずとも参加可能で、幅広い年齢の子供がいました。

 

そのプログラムでは、ウッドランドと呼ばれる、泥だらけ土だらけの林の中へ。真ん中の開けたスペースには様々なアクティビティが用意されていて、ちょっとしたワンダーランドのようでした。

 

自然の中でたくさん遊んだあとは、参加者みんなでたき火を囲み、そこで作ったホットチョコレートとポップコーンを頂きました。お砂糖が多くていつもはダメと言われていた飲み物を飲んで大満足の娘(笑)。

2日目の朝食風景。焼きたてのクロワッサンがおいしくて毎朝食べていました。
ウッドランドにしつらえられた大きくて真っ白なテント。まるでおとぎ話にいる気分になれる風景です。
ウッドランドの地面にはキノコもたくさん生えていました。

滞在3日目は、コースランチが食べられるレストランへ。元は馬小屋だった建物を改装したレストランの名前は“ゼブラ・ライディング・クラブ”。名前のゼブラ(シマウマ)の由来は、かつてこの建物の持ち主だった貴族の女性はずば抜けて大胆な発想の持ち主だったそうで、ロンドンとの往復に使っていた馬車をゼブラに引かせていたからだとか!

 

食事の後はガラスのコップ作りに挑戦。溶けているときの扱いが実はとても難しく、ガラス作りの工程を改めて知ることができ、一家で充実した時間が過ごせました。

メインディッシュの鹿肉のステーキ。
馬小屋の中に入るのは初めてだった娘はこんなに天井が高いのかぁ、と大興奮。どのレストランでも大人も満足できるほど美味しかったキッズメニュー、この日は奥深い味のトマトソースが美味しいパッパデッレ。
ワークショップで出来上がったグラス。

そして楽しい時間は過ぎ行き……3泊4日のロングウィークエンドは終了。

ここで味わった滞在中の気分は、旅気分というよりも、どこか現実離れしたクールな村の仲間入りをさせてもらったかのような、大きなシェアハウスで楽しい仲間と暮らしたような、そんな気分。

美味しい物を食べ、疲れを癒し、自然に触れ、新しい体験をして……親子でひとつ成長できたような、そんな充実した滞在でした。

 

この「バーチ 」は自給自足をモットーとし、農作物や家畜の飼料などは敷地内で生産してそれらを最大限に利用する、修繕できる物や再利用できる物を大切に使い、環境へのインパクトを最小限に抑える努力をする……など、サステナブルなマインドも持ち合わせて運営されているとのこと。同じコンセプトのホテルを今後イギリスの他のエリアにもぞくぞくと開店させたいのだそうなので、今回満席で逃してしまったパン教室と陶芸教室を目当てにまた必ず訪れたいと思っています。

 

“withコロナ”の暮らしはまだしばらく続いて行きそうですが、また近い将来、日本との往来が通常に戻る時がやってくると思います。あと数ヶ月後の私たちは何を考えて何を見ているのでしょうね……。

 

今回でこちらの連載は終了となりますが、ロンドンの「今が感じられる出来事」を届けたいなー、と、毎月テーマを決める時間が一番の難関で、そして一番楽しかったひとときでした。ロックダウンから学んだ様々なことを胸に、このイギリスで、あたふたとそしてのんびりと、そしてこれからもサステナブルなことを視野に入れつつ、子育てして行けたらと思っています。

ファミリーより、愛を込めて。「Tata for now!」

またいつかどこかで。

どうぞお元気で!

 

シホ xxx

 

※本連載はこちらの回にて最終回となります。ご愛読ありがとうございました。(Fasu編集部)

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