DATE 2020.10.16

【CATALUNYA/From YAYOI】スペインの田舎暮らしから。YAYOIのカタルーニャ日記Vol.4

普段はおしゃべりなカタルーニャの人々が、唯一口をつぐむもの...…それはキノコの採取場所! 緑豊かな自然に身を委ね、子どもたちと山の宝探しを楽しんだYAYOIの10月。

※食用にできるか否かの判断を、本記事の写真から行うのは避けてください。野生のキノコを口にする場合は、専門家の判断を必ず仰ぐようにお願いします(Fasu編集部)

 

10月。秋といえば食欲の秋。栗、松茸、さんま、柿、ぶどう、さつま芋……。

皆さんは既に秋の味覚を何か口にされましたか?

 

ここカタルーニャでは秋といえば、きのこと栗。市場に行くと、この時期日本では見かける事がない様々なキノコを見かけます。

日本のキノコ代表のような存在である「シイタケ」。同じ名前で、こちらの普通のスーパーで一年中買うことができます。ラッキーだと、たまにしめじ、えのきたけなんかも見つかります。

我が家では、この季節、週末ごとに山にキノコ狩りに出かけています。子どもと一緒に自然の中で楽しめる秋のアクテイビティと言えば聞こえはいいのですが、どちらかというと、キノコ探しに異常な情熱を持っている私のパートナーに誘われて散歩がてらについていっている感じです。さぞ、キノコに詳しい人という感じがしますが、彼は全くの素人です。

キノコ散策に行き、携帯アプリで種類を確認、幾つか採ってはみるのですが、やっぱり怖いので全て破棄。普段はその繰り返しです。少しずつキノコの知識が増えてきてはいるのですが、独学だけではやはり限界があるようです。こんなに小さくて可愛いけれど、一歩間違えれば生死に関わりますからね。そして知れば知るほど、食用キノコによく似ている紛らわしい毒キノコの存在があることを知り、素人には簡単に手が出せないものという事に気がつくのです。

簡単に出来そうで出来ない食用のキノコ狩り。キノコに対する想いは募るばかり。もう諦めるべきか……。ところが、彼がキノコ狩りにいかに情熱があるかを色んな人に話し続けていたせいか、とうとうお声がかかりました。村に住む農業を営むパパ友のリカルドがキノコをよく知っているので、キノコ狩り一緒に探しに行こうと誘ってくれたのです。やったね!

幻想的なキノコ。君は毒があるのかな?

ここカタルーニャではこの季節、キノコ狩りが有名です。今年はコロナ禍でほぼ全ての行事がキャンセルされていますが、普段はキノコにまつわる食のフェスが色んな村で行われます。

昨年のキノコフェステイバルの模様。室内にはカタルーニャで採れる実物きのこ(100種類近く)の展示。チケットを買って、ワインと一緒にキノコの郷土料理を食べることが出来ました。

ここに住む人達はとてもお喋り好きで、見知らぬ人に出会っても直ぐにちょっとした会話を始めたりします。が、キノコに関しては別物。ここに来た当時はそのことをよく知らずに、キノコがいっぱい入ったバスケットを抱えた村の老人に「どこでそのキノコを採ってきたの?」などと無邪気に訊ねていました。が、様子がおかしい。みんな少し気まずそうな顔をして言葉を濁すのです。村にあるお店で働くおばさんに尋ねてみると、キノコの取れる穴場はみんな隠すものなのだそうです。まあ、私も松茸だったら穴場を簡単には口外しないかな……。だって一攫千金も夢ですもの(笑)!

さてリカルドが誘ってくれたキノコ狩り。行ってきました。

当日は気持ちのいい秋晴れの日曜日。前日に降った雨で気温も少し下がり、土も湿っているので、絶好のキノコ狩り日和です。私は詳細を知らされておらず、当日初めて知ったのですが、このキノコ狩りには、同じ幼稚園に子どもを通わせる顔見知りの家族×6、総勢20人が参加していました。

 

正直、キノコの穴場はみんな隠すものだと思っていたので、主催者のリカルドの太っ腹ぶりにびっくり、しかもこんなに大勢に穴場を教えるなんて。大丈夫かな。

 

朝10時、村の入り口に集合し、北西に1時間余り、車を山の頂上付近まで走らせます。

既に10台余りの車が停まっており、籠を持っている人の姿もチラホラ、リカルドの表情は少し曇り気味。(出遅れたかな。キノコは取り尽くされてしまったかな……。)少し気が焦りますが仕方ない。大小の籠を片手に持って、さあ、キノコ狩りのスタートです。

同じ幼稚園に通う8人の小さな子ども達が参加しています。下は3歳、上は5歳です。
各自が手に持つ籠の大きさに、このキノコ狩りへの期待値が表れているようです。うちのは若干大きめです。
子ども達もお手伝い。子どもって目が素晴らしくいいのと、目線が低いので、大人がびっくりするくらい沢山のキノコを見つけてくれます​。

さて、沢山のキノコを発見しました。黄、茶、白、赤、紫がかったものまで。

形も様々で、花びらのようになったものから、漫画に出てくるような大きなものまで。色んなキノコがあるものなんですね。

ちょっと怪しげなキノコ。毒キノコかな。
お菓子の「きのこの山」に似てる⁉︎ キノコの家族のようで可愛いです。
Slippery Jack。裏と軸が黄色のスポンジのようなキノコ。山に登らなくても低い場所でも頻繁に目にするキノコです。食べられるが、あまり美味しくはないらしい。
キノコと記念撮影。大きなキノコを前に少しナーバス気味です。

山の中に入って10分しないうちに、Camagrocというキノコをリカルドが発見。落ち葉をかき分けてみると、至る所に生えています。濃い茶色の傘と細いオレンジの軸が特徴です。リゾット、パスタ、オムレツなんかに入れて食べると美味しいのだそうです。そう言えば、このキノコを市場で見かけました。

確か1kg20€ 弱。高いのか安いのかよく分からないのですが、とりあえず食べられるキノコが見つかって嬉しい。ある程度の数がまとまって生えているので、それを根気よく摘み取ってカゴに入れていきます。

こちらがCamagrocというこの辺りで人気のキノコ。とても小さく細くデリケートです。 今回はこのキノコを沢山収穫しました。
このキノコ、苔や落ち葉の下に隠れていることが多いので、落ち葉をかき分けながら探します。
童心に帰って子どもと一緒に夢中になれる、まるで宝探しのようなキノコ狩り​。

山の中にしばらくいると、普段はぼんやりとしている五感が研ぎ澄まされてくるような気がします。湿った柔らかい土や枯れ葉を踏む感触。なんとも言えない静けさと土や樹々の匂い。人間ってやっぱり自然の一部なんですね。心が穏やかになる気がします。

 

そう言えば、今年はコロナで外出禁止令が出て6週間、家から一歩も外に出られず、テラスで育てているハーブの土いじりが心の癒しであった事を思い出しました。冷たく湿った土を無性に手で触りたくて。身体が欲すると言うのでしょうか、あんな感覚は初めての経験でした。あの時だけは身体の奥で眠っている本能がSOSを発信していたのでしょう。

気がつけば、どんどんと道無き道を切り拓いて進んでいきます。

思う存分に土を触り、転んでしまったりしながら、子ども達はみんな泥まみれです。

2時間近くの山の散策。疑問に思ったキノコを見つけると、すぐリカルドに確認します。

 

彼が首を縦に振るときは確実に自分の知ってる食用のキノコだと判断した時のみ。楽しいだけではなく、曖昧な答えを出すにはリスクが高すぎるキノコ探しなのです。

 

彼は幼少期、親に連れられてよくキノコ狩りに来ていたそうで、その経験からキノコのことを学んだんだそうです。

青いダウンを着ているのがリカルド。みんな彼にキノコを確認中。彼のおかげで、実際に食べられるキノコを採ることが出来ました。感謝です。

今回、食用キノコはCamagrocとRovellonの2種のみの収穫でしたが、みんなのカゴも心もいっぱいに満たされたのではないでしょうか。

 

私もこの二つのキノコの見極め方はしっかりと覚えました。このように、食べられるものを地道に一つずつ覚えていくものなのでしょうね。

 

この後は、みんなで持ち寄ったランチでピクニックをして、再度さっと別方向にキノコ散策に行って解散です。なんだかみんなが一体になった感じがしたところでキノコ狩り終了です。

数日前にオンラインで買ったこの美しいキノコの本が今朝届きました。ここに載っているだけで1,000個のキノコがあります……。リカルドのご両親のように、子どもに少しでも多くキノコのことを伝えてあげたいなと思っています。もちろん食用かどうかは知識のある人にちゃんと確認します。

 

 

※本連載はこちらの回にて最終回となります。ご愛読ありがとうございました。(Fasu編集部)

LATEST POST 最新記事

第3回 : 教育の多様性とテクノロジー
第2回:コンヴィヴィアルな家族のあり方
第1回:多様な生き方、暮らし方
トレンドのくすみカラーが満載。軽さも魅力の村瀬鞄行「ボルカグレイッシュ」【2023年入学ラン活NEWS】