DATE 2021.10.21

大宮エリーが考える、今の子供たちに「クリエイティブ力」が必要だと思う理由

自然災害にコロナと、予測不能の事態が次々起きている昨今。良い学校に入学し、有名な企業に就職さえすれば、子供たちの幸せな未来は確約できるのだろうか?人生でどんな事が起きても生き抜ける術を教えたいと、子供向けクリエイティブ学校をはじめた大宮エリーさんの想いとは。

 

作家、画家、脚本家、CMディレクター、映画監督など、マルチに活躍する大宮エリーさん。そんな大宮さんがこの夏、子どもたちの「クリエイティブ力」を鍛えるオンラインスクール「こどもエリー学園」を開校した。「学校や塾では学べないことを教える」というこの学校では、実際にどんなことを学べるのか?そして今の時代になぜ、子どもたちには「クリエイティブ力」が必要なのか。

Fasuでは今回、授業配信の様子を特別に見学。授業終わりの大宮さんにお話を伺った。

 

東日本大震災をキッカケに感じた「クリエイティブ力」の重要性

 

―2021年8月に開校したばかりの「こどもエリー学園」ですが、なぜ子ども向けの学校を始められたのでしょうか?

 

もともとは2020年の8月から、オンラインで大人向けのクリエイティブ学校をはじめました。東日本大震災をキッカケに、9年前から「クリエイティブ力」を教える学校をやりたいと思っていたんです。

震災のような大きな出来事が起きると、Aという方向性で生きようと思っていたのに、Aが急にダメになって、じゃあBに行くかとなってもBもダメで……と、自分が描いていた道が突然閉ざされて絶望してしまうことがあると思います。でもそれは固定概念が邪魔をして、他の可能性を自分で潰してしまっているんだと思うんです。だから固定概念を取り払って自由な考えができるようになれば、「FとかHとか他にも面白い生き方があるかも」と思えるようになるのではないかと。そんな風に色んな可能性を思い描ける「クリエティブ力」を教えたいと、まずは大人向けにクリエイティブ学校をはじめました。

 

―大人向けからはじめて、現在子ども向けにも開校した経緯は何だったのでしょう?

 

私がクリエイティブスクールの話をラジオで話していたら、パーソナリティの方から「それって、子供にこそ必要な力じゃない?」と言われたんです。確かに子供もそうだな……と思って。実はコロナの前から度々、美術館や地方自治体に頼まれ、子供向けに言葉の授業や絵の授業などやっていました。その積み重ねから本格的に子供向けの学校もやりたいという想いが強くなって、この夏スタートしたという形です。

 

―「クリエイティブ力」と聞くと、「アーティストやクリエイターになるために必要なスキル」のように感じる人も多いと思います。こどもエリー学園で子どもたちに教える「クリエイティブ力」とは、どんな意味合いを持つのでしょうか?

 

私が考えるクリエイティブ力は、先ほども言ったように自分の「可能性」を広げる力。子ども向けも大人向けも変わらず同じ意味ですね。こどもエリー学園では、その子の持つ「可能性」をとにかく広げてあげたいと思っています。

 

―自分の可能性を広げて「人生を生きぬく力」、ということでしょうか?

 

そうですね。だって何が起こるか分からない時代ですから。いまもコロナなんて、誰が想像できただろうかと。でも先行きが不透明な時代だからこそ、子供たちは特に「自分の可能性」だけは広げておいた方が良いと思っています。社会がどうなったって自分で可能性を見つけて生きていける強さが、いま必要だと感じますね。

 

―大宮さんご自身も、マルチに仕事をこなして、色んな可能性に挑戦しているイメージがあります。

 

私自身、“マルチであること”はコンプレックスでもあったんです。これまでの人生で何か一つのことを突き詰めてきた訳じゃなくて。東大の薬学部出身ですが、薬学の勉強をしたはずなのに広告の会社に入って、色んな仕事をしてきて。「どうしてそんなに色んな仕事ができるんですか?」と聞かれることもあるのですが、考えてみると、これまで自分なりに独学で、クリエイティブ力を鍛えるトレーニングをしてきたからじゃないかと思っていて。だからたくさんの可能性を見出せたのかなと。そうやって培ってきた「クリエイティブ力を伸ばす術」なら大人にも子供にも教えられるぞ、と思って「クリエイティブ力」に特化したスクールをはじめました。

授業を配信する教室の片隅には、大宮さんが「可能性」と書いたボードを飾っている。
授業を配信する教室の片隅には、大宮さんが「可能性」と書いたボードを飾っている。

「多様性」は海外だけでなく、日本国内にも存在する

 

―学園をオンラインスクールの形式にされたのは、何か意図があったのでしょうか?

 

オンラインにしないと対象が東京の子供だけになってしまうからです。特に東京で暮らす子供たちこそ、地方の子たちとも繋がった方が良いと思うんです。実際生徒は、東京だけでなく、北海道から関西、九州の子もたくさんいますね。

子供たちには、世の中を広く捉えられる子になって欲しい。「多様性の時代」と言われていますが、もちろんそれでインターナショナルスクールに行くのも良いけれど、世の中を広く考えるって海外だけじゃないと思います。日本の中でも視野を広げられる子になって欲しいし、日本の色んな土地に、自分と同じような考えやさまざまな考えを持つ子がいるんだと感じてもらいたいので、オンライン形式にしています。

 

―先ほど見学させていただいた授業でも、個人発表の前に全員が自分の出身地を言っていましたね。全国各地の子たちがこんなに参加しているんだと驚きました。

 

そうやって色んな地域の子達が繋がって、子供たちには仲間の顔を見ながら頭の中で日本地図を描けるようになって欲しいなと思っています。

 

―授業内容も大宮さんが作られているということですが、その特徴を教えてください。

 

基本的には月3回の授業。教えるのは「ことば」と「アート」の2ジャンルに設定しています。例えば言葉の授業であれば「キャッチコピーを作ろう」、アートの授業なら「名刺を作ろう」など、毎月お題を出して授業を進行しています。1回目の授業は私からのレクチャー。2回目は、1回目の授業を踏まえて自分の作品発表。そして3回目では、外部から「おもしろい大人」をゲストに招いた特別授業という形で進めています。

8月の授業「名刺を作ろう」では、子供たちの中にある「名刺=白い紙に肩書きが書かれているもの」という固定概念を取り払いたいと、大宮さん自らがりんごの名刺を作成し紹介したそう。
8月の授業「名刺を作ろう」では、子供たちの中にある「名刺=白い紙に肩書きが書かれているもの」という固定概念を取り払いたいと、大宮さん自らがりんごの名刺を作成し紹介したそう。
大宮さんの“りんご名刺”に触発され、「自分自身は何者か」を自由なアイディアで作品にし、MY名刺を個人発表した時の様子。
大宮さんの“りんご名刺”に触発され、「自分自身は何者か」を自由なアイディアで作品にし、MY名刺を個人発表した時の様子。

―特別授業で呼ぶゲストの方は、どのような理由で選んでいるのでしょうか?

 

いろんな分野の超一流の人に声をかけています。過去には、ひとつ星レストランのシェフやレゲエ王者の方に来て頂きました。

今の子供たちって、コロナで人に会わなくなっていますよね。You tubeで自分の興味のある映像ばかり見ている子も多いと思います。でもそうすると、新しい世界や人に偶然出会うという機会もなくて、視野が狭くなるんじゃないかと危惧していて。10月の特別授業では漆芸家で人間国宝の室瀬和美さんに来ていただきますが、子供たちがYou tubeで漆の動画は絶対見ないですよね(笑)子供たちにそんな普段の生活ではあり得ない出会いの機会をたくさん与えてあげたいと思っています。

 

子供も保護者も安心して頼れる場所を目指して

 

―大宮さん自身は幼少時代の思い出で、今のご自分を作り上げたと感じるような人との出会いや経験はありますか?

 

子供時代は一人っ子で親も共働きで家にいなかったので、空想して遊ぶことが多かったです。実は人生が変わる出会いとかがなくて……たいした子ども時代じゃなくてすみません(笑)

でも人生で大きな転機を挙げるとするなら、学生時代にイジメられた経験かな。人ってイジメられると、絶対的に自分に自信が持てなくなるんですよ。しかも子ども時代の悲観的な考え方って、大人になっても染み付いてしまう。そんな風に自分が痛い目にあってるので、こどもエリー学園の生徒にもいじめ経験がある子がいたら、「それは君のせいじゃないよ」と伝えたい。授業中に子供たちに「今悩んでいることや困っていることってある?」ってフランクに聞いたりもしています。寺子屋じゃないですけど、みんなが想いを吐き出しやすい場にしたいなと。

 

― こどもエリー学園が学校や家庭以外の自分の居場所になって欲しいと、HPでも書かれていますよね。

 

私自身、学生時代に塾に行くようになって、その塾の存在に救われたんです。いじめみたいな学校での辛い経験って、親にも気を使って言えなかったりするじゃないですか。だから家や学校で本当の自分を出せないという子どもにとって、こどもエリー学園が心が温まる場所になると嬉しいです。そして親御さんにとっても、学園が一息できる場になればと。育児を自分たちだけでこなすって本当に大変だと思うんですよ。だから月に3回・90分間だけでも、親御さんが「エリーさんが子供を見ててくれるからゆっくりしようかな」って一休みできる時間になれると良いなと思います。

 

―最後に、こどもエリー学園での学びが最終的に、子供達の将来にどんな影響を与えて欲しいと考えていますか?

 

一番大事にしている「可能性」を広げるということを実現して、生徒たちが大人になって社会に出たときに、エリー学園で学んだことが役立ったら嬉しいですね。クリエイティブ力は受験問題には出てきませんが、社会に出た時こそ役立つと思うので

あと、私の知り合いでとても優秀な20代の女性がいるのですが、彼女が学生時代、小・中学生向けの「未来のリーダーを育てるキャンプ」に参加したらしいんですね。1日開催だったそうなのですが、その体験が強烈に記憶に残っていると言っていて。しかも当時の付き合いが今も続いていると。こどもエリー学園でも、生徒同士でそんな風に繋がってもらいたいです。全国の仲間と繋がって、彼らがいつか生涯の友になったら最高ですね。

 

作家、脚本家、画家、映画監督、演出家、CMディレクター、CMプランナー
大宮エリー

1975年大阪生まれ。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。映画「海でのはなし。」で映画監督デビュー。主な著書に『生きるコント』(文春文庫)、『猫のマルモ』(小学館)、『なんとか生きてますッ』(毎日新聞出版)のほか、絵と詩で綴る絵本『虹のくじら』(美術出版社)など。2020年にクリエイティブ力に特化したオンラインスクール「エリー学園」を、2021年に「こどもエリー学園」を開校。

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