DATE 2021.02.23

北欧・ノルウェーで虫歯が少ないワケとは? 現地のオーラルケア事情をリポート

オーラルケア先進国と言われる北欧。子どもから大人まで虫歯のトラブルが少なく、生涯保有する歯の本数も多いといわれている。なぜ北欧では、徹底したオーラルケアが定着しているのだろうか。ノルウェー在住のライター・鐙麻樹(あぶみ・あさき)さんが、その理由をリポートする。

歯医者の治療費が全額負担の国!

北欧といえば豊かな福祉制度が世界的にも有名ですが、ノルウェーは実は、歯科治療だけは全額負担。0~18歳までの子どもは無料、19、20歳は安めに設定され公共の歯医者であれば自己負担費は25%になりますが、それ以降の大人は全額負担となります。ちなみにノルウェー国籍があるか外国人かは関係なく、誰もが多額の治療費を支払わなければいけません。

(c)イメージナビ/amanaimages

ノルウェーに移住して12年目の私ですが、最初の年で銀歯が外れてしまい、首都オスロの歯医者に行ったところ、借詰めしてもらうだけで当時の額でおよそ8万円を泣く泣く支払いました。この時の金銭的ショックが大きかったため、心を入れ替えたように毎日フロスとフッ素ケアを必死にするようになった結果、一度も虫歯にはなっていません。これだけ財布に響く額が大きいと、保護者も子どもの歯磨き教育に自然と必死になるのが想像できます。

 

歯医者での定期的な歯科検診は1万円前後しますが、虫歯になってから支払う代償はもっと大きいため、1~2年に1度は検診を自ら希望して歯医者に行く人もいます。

治療費が全額負担というのはショック療法ではありますが、国民の意識を変えるオーラルケアにつながっていることは間違いなさそうです。

 

※大人は基本的に全額負担ですが例外もあり、医療介護ケアが必要な高齢者や障がい者、難民や難民申請者、一部の受刑者などは無料化・一部負担の対象となります

 

ノルウェーの歯磨き教育に貢献した絵本とは?

そんなノルウェー人の歯磨き教育に大きな貢献をしている、有名な「絵本」があります。多くの名作絵本を残したトールビョルン・エグネルが1949年に出版した、『カリウスとバクトゥス』(原題:Karius og Baktus)という虫歯兄弟の物語です。

歯磨きをしないイェンスという少年の口の中には黒髪のカリウスと赤髪のバクトゥスが住んでおり、虫歯菌をせっせと増やす工事に励んでいます。虫歯をお家にしている兄弟が、イェンスに「お母さんの言う通りにしちゃだめだよ!」と語りかけるセリフもノルウェーでは有名です。

この絵本を教材に、幼稚園や保育園では話し合いが行われます。「でも、歯磨きや歯医者さんの治療でお家がなくなっちゃったら、兄弟がかわいそうだよ」と同情する子どももいるとか。道徳の勉強にもなります  illustration : Thorbjørn Egner/Cappelen Damm出版社

この絵本は今では25か国語で翻訳されており、映画や劇場化もされています。ノルウェーは日本以上に「聴く読書」(オーディオブック)が浸透している国でもあるため、演劇・映画・本などを通じて、兄弟が歌う定番の音楽は市民の耳になじんでいます。

 

オスロ劇場の公式動画

ノルウェー人は小さな頃から、カリウスとバクトゥスが自分たちの歯に引っ越してこないように、必死に歯を大事にします。このように国民のオーラルケア意識に大きな影響を与え、教育関係者や保護者にとっても欠かせない教材となっている絵本ですが、まだ日本で翻訳化されていないというのが不思議です。

赤ちゃんが生まれたばかりの友人は出産祝いとして、『カリウスとバクトゥス』セットをもらったそう。大きな箱の中には、絵本とコップ、歯ブラシが入っていました
Photo : Asaki Abumi

ノルウェーキッズは、歯ブラシ・フロス・フッ素の3点セットが基本!

大人と同様に、ノルウェーの子どもたちは歯ブラシとフロス、フッ素の3点セットでケアすることが常識となっています。ノルウェーのスーパーには、多種多様のフロスや歯ブラシがずらりと並び、意識の高さを実感できます。

Photo : Asaki Abumi

ちなみに同じ北欧でも、フィンランドはキシリトールケアを積極的に取り入れていますが、ノルウェーではそこまでメジャーではありません。何よりもフッ素に信頼を置いており、薬局には子ども用にさまざまな味のフッ素アイテムが取り揃えられています。

Photo : Asaki Abumi

いまトレンドなのは、「エコ」なオーラルケアグッズ

最近北欧では、オーラルケアとの時間をより楽しく、さらに環境への罪悪感も減らしていく、という考えが広まっています。北欧らしいスタイリッシュなデザインの製品を選ぶだけでなく、その製品が「エコか・サステナブルか」どうかも消費者が問うようになってきました。

 

欧州では環境のためにプラスチックを減らす・禁止する動きが加速しており、歯ブラシ本体やそのパッケージも、どんどん脱プラをしています。プラスチックを使用するとしても、バージン(新品・未使用の)プラスチックは避ける企業が増加中。

リサイクル紙の簡易包装、海で分解される生分解性プラスチックなどを使用した商品は、ここ数年で店頭の棚にずらりと並ぶようになりました。そういった意識の高さも、オーラルケア先進国の名に相応しいといえそうです。

写真中央のバンブーの歯ブラシのように、エコを意識した製品が急増中
Photo : Asaki Abumi

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