DATE 2021.02.15

キシリトールにシーラント。虫歯がない子にするために一番大切なこととは?【子どものオーラルケア新常識・後編】

後編では、自宅でのオーラルケアと同じく悩みのタネに挙げられる、“子どもと歯科医院との付き合い方”にフォーカス。「子どもが歯医者を怖がって行きたがらない」「どれくらいの頻度で通うべき?」そんな疑問に迫ります。

 

虫歯が少なく、オーラルケア先進国として名高い北欧諸国。日本人のオーラルケアに対する意識とは、どれくらい差があるのでしょうか? カギとなるのは「予防」という考え方、そして予防と切り離せないのが、「小児歯科」とのつきあい方です。

「キッズデンタル」代表の小児歯科医、坂部潤先生にお話を伺いました。

 

 

北欧諸国のオーラルケアはなぜ、「予防」重視なのか?

フィンランドをはじめとする北欧諸国は、子どもの虫歯が少ないことで有名です。北欧と日本のオーラルケアの違いはどこにあるのでしょう。

 

「確かに現在の北欧は虫歯が少ない国ですが、40年以上前は他のヨーロッパ諸国より虫歯が多く、また入れ歯率も高く、問題になっていました。そこで国をあげて虫歯対策を行うことになり、学校や地域のプログラムで虫歯予防の啓蒙が組み込まれるようになりました。今では妊婦の段階から、子どものオーラルケアについてガイダンスしているほどです。『虫歯予防』に対する行政の意識の高さが、日本と大きく違うところですね。

 

虫歯予防には食生活や歯磨き習慣などさまざまなアプローチがありますが、『キシリトール』を積極的に取り入れるのも方法の一つ。日本ではガムのイメージが強いかもしれませんが、『キシリトール』は代用甘味料の1つ。虫歯の原因菌であるミュータンス菌を減らせる、砂糖や他の甘味料にはない特徴があります。フィンランドでは食事の後は歯磨きだけでなく、キシリトールのタブレットを舐めることが習慣となっています」

キシリトール・ガムは、噛むことで口腔内にキシリトールを長く残留させることができる。ガムやタブレットだけでなく、最近では甘味料としてキシリトールを使用したチョコレートも販売されている。

天然の歯にこそ価値がある。「治療」より「予防」することが大切

「虫歯ができても、すぐに歯医者で治してもらえるから」と、安易に考えている傾向がある日本人。歯科医療に対する意識改革も必要だと坂部先生は言います。

 

「私自身が小児歯科医を志したキッカケでもありますが、いまの歯科医療は、虫歯を直すための研究が主。大学でも、講義は虫歯を治すための授業ばかりでした。でもどんなに上手に虫歯を治したとしても、天然の歯の優れた状態には戻せません。『現状より良くなる』だけであって、天然の完璧な歯に戻すことは不可能です。だからこそ、幼児期から天然の歯を守ることが何より大切だと感じ、私は小児歯科専門のクリニックを開業しました。『虫歯ができても治せば良い』ではなく、今の子どもたち・親たちにはぜひ、『予防歯科』に対する高い意識を持ってもらいたいですね」

 

小児歯科と大人向けクリニックは何が違う?

歯の健康を保つには毎日のホームケアに加え、プロによる定期的なケアが大切。大人も通う一般的な歯科医院と、小児歯科医院との違いとはなんでしょうか。

 

「子どもの歯は構造上、虫歯は痛くならず、しかも早く進行します。痛がっていないから虫歯はない、という思い込みは非常に危険。家庭だけで判断せず、歯科医で定期的にチェックすることが大切です。統計上は子どもの虫歯は少なくなっていますが、虫歯ゼロの子か、虫歯がたくさんある子かで二極化しています。1本虫歯があるとそれ以外の歯も虫歯の傾向が必ずありますので、虫歯の経験がある子は特に、歯科医院でのチェックの頻度を減らさない方がいいでしょう。

 

子ども専門の『小児歯科』の場合、大人のクリニックと比べ歯の生え変わりや歯並びなどの子どもの成長過程に基づいた、より専門的な診断と治療が可能になります。断片的な診断・治療だけではなく、長期的な視野でのアドバイスを受けられるのが特徴です。また匂い、音、スタッフの接し方など子どもが怖がらないような配慮があり、子どもが嫌がってでもきちんと治療ができる体制が整っています。

 

小児歯科に通い始めるタイミングは、最初の歯が生え始めてきたらがベスト。頻度は3〜4か月に1回、定期的に通っていただくのが理想です。ただ、子どもは虫歯のリスクが高まる時期や、永久歯の生え方で注意が必要な時期がありますので、通院する間隔は医師と相談するといいでしょう」

「子どもの緊張をほぐすために、怪獣のマペットと大きな歯ブラシを使って、治療の前に“歯医者さんごっこ”をすることもあります」と坂部先生。

小児歯科治療の新トレンド、「シーラント」とは?

虫歯を予防するために、定期検診や歯のクリーニングに加えて、いま小児歯科で受けられる注目の治療が「シーラント」。気になるその効果とは?

 

「小児歯科の治療の1つに、歯質の強化があります。なかでも『シーラント』と呼ばれる治療では、歯の溝に虫歯の菌や汚れが入り込まないよう、フッ素が滲み出る樹脂を用いて溝のコーティングを行います。乳歯や、歯質が柔らかい生えたての永久歯に効果があり、必要に応じて受けることができます。小児歯科の世界では非常にスタンダードな治療法で、いま小児専門のクリニックに通院する子どもたちの多くが、この治療を受けています」

「若干の苦みなどはありますが、削るのではなく溝にジェルを塗布するだけなので、痛みはありません」

子どもが「歯医者嫌い」にならないために、一番大切なことって?

歯医者とは人生で長いつきあいになります。早い時期から定期的に歯科に通うことは、トラブルを未然に防ぐのはもちろん、歯医者への恐怖心を育てないことにもつながります。

 

「小さな子どもにとって、虫歯治療で行く歯医者ほどリアルに怖いところはありません。その前に虫歯がないかの定期的なチェックで、習慣づけておくことが大切です。

当院では治療が終わったらお土産を渡したり、テレビを見ながら治療ができたりと、『あの歯医者さんは楽しそうだからまた行ってもいいな』と、継続的に通ってもらえるような仕組みを意識しています。

また、声かけも大切にしています。何が怖かったのか、痛かったのかといった理由を聞きだしてもきりがないので、『怖くて痛かっただろうけどよく頑張ったね、偉いね』とか『これからもっと歯を綺麗に素敵にしていこうね』といった、ポジティブな言葉をかけるようにしています

 

保護者のみなさんもぜひ、『虫歯になったら歯医者で痛い目にあうよ』ではなく、前向きな声かけを(笑)。大人が美容院やエステに行ってキレイを磨く気持ちと同じ感覚で、歯医者やオーラルケアは楽しく健康を維持するためのものだということを、積極的に伝えていただければと思います」

明るい内装や大型のおもちゃを用意することで、子どもに「行きたい!」と思わせる工夫を凝らしている院内。

坂部 潤先生

小児歯科「キッズデンタル」代表。麻布をはじめ、目黒、成城、代々木上原の都内4ヶ所で「キッズデンタル」を運営。4児の父としての経験を生かし、継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。歯学博士(小児歯科学)、日本大学歯学部兼任講師(小児歯科学)、日本小児歯科学会認定小児歯科専門医、日本歯科矯正学会会員、UCLA小児矯正歯科客員研究員。

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