想像力を育てる文字のない絵本
行方不明になった猫を一緒に探してみよう、『ぼくの ねこは どこ?』。
アメリカで人気の現代絵本作家ヘンリー・コールの1冊です。ペンで素描された緻密なモノクロ絵の中に空の澄み渡るような淡いブルーが印象的です。気持ちいい休日のある日。男の子の猫は小鳥を追いかけて窓から出て行ってしまいます。一体、猫はどこへ? 男の子の猫の目印は、お腹の真ん中あたりに入ったブチ模様。街の中に逃げ出した猫を無事、みつけることができるでしょうか。子どもたちが大好きな「さがし絵」絵本ですが、そこにちゃんとストーリーやリアルな街の風景があるのが魅力です。人々のざわめきや笑い声、車の騒音まで聞こえてきそうな細くて、生き生きとした絵の世界。猫を探しながら、その世界にどっぷりと入り込んでしまいそうです。
イエラ・マリが生命の神秘的な繋がりを描く『にわとりとたまご』。
イエラ・マリといえば『あかいふうせん』や『りんごとちょう』など文字のない視覚的で直感的に楽しめる絵本制作で知られる絵本作家であり、グラフィック・デザイナーです。『にわとりとたまご』は夫で、イタリアを代表するデザイナーとしても著名なエンゾ・マリとの共作。本作でも、“言葉”は使わずに、にわとりの足元に視点をフィクスして物語は進みます。生み落とされた、たまご”の中でひよこが成長し、生まれます。その、ひよこは成長し、また1羽のにわとりへ。カバーに隠された裏表紙の大きくなったひよこの足をみてハッと気づきます。ごはんをたくさん食べ、大きく成長したひよこは、また、たまごを生むにわとりになるのです。繰り返される命の繋がりを実に端的に、そして大胆に描いています。
不思議な本の中の世界へ旅に出た女の子のお話、『レッド・ブック』。
ニューヨーク在住の絵本作家バーバラ・レーマンの文字のない絵本。マンハッタンに住む都会の女の子。道端で拾った1冊の赤い表紙の本を開くと、そこには南の島の地図が。南の島にはひとりの男の子が住んでいて、男の子もまた雪の降る高層ビルが描かれた本を読んでいました。2人はお互いの物語を読んでいるようで……。地図が大好きだった作者が、地図を眺めながら見知らぬ土地に思いを馳せていた体験から生まれた絵本。本の中にある、もうひとつの世界とつながった赤い本。それは、私が今読んでいるこの「レッド・ブック」ともつながっているのかも……と、ドキドキとさせられます。ストーリーやセリフを子どもたちと一緒に考えながら読むのも楽しい1冊です。