そんなふう 33
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先月、あるプロジェクトのためにチェンマイに行き、滞在した施設に猫がたくさんいた。そのなかの1匹が以前飼っていた猫と同じような茶と白の混ざった柄の猫だった。似たような色のせいか、娘が「サイー」といまはもういない猫の名前で呼ぶ。亡くなって10ヶ月近く経つし、当時娘は1歳2ヶ月だったのだが、まだその猫のことを覚えていたんだな、と、ふと感慨深くなった。
昨年の秋、これからも娘の成長を共に見守ってくれるだろうと思っていた矢先に、自分の想像よりもずっと早くに寿命を迎えてしまったサイ。家族だと思っていたメンバーの不在、あるだろうと思っていた未来が急に途絶えたこと。その事実を現実として受け止められず、しばらくかなしみに暮れていた。そのサイに、チェンマイでふと再会できたかのような気持ちに一瞬なり、胸がつまったが、目の前にいる猫はサイのように長くなく、短い丸い尻尾だと気がついて、我に返る。それでも娘の口から久しぶりに猫の名前を聞けただけで、時間が巻き戻されたかのような、切なくも甘い気持ちになった。
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