MilK JAPONがビジネスセミナーを開催!【会田大也×遠藤幹子】時代が求める、 ゆるい会員組織と おせっかいなコミュニティ
そんな状況を打破するための具体的なアイデアを、コミュニティづくりのスペシャリスト・会田大也さんと、子どもを通してコミュニティを活性化させる場を実現する建築家・遠藤幹子さんに語っていただきます。
「権限の委譲」が会員組織を活性化させる
会田大也(以下、会田):コミュニティって昔は物理的な距離に拘束されていたけど、いまはネットワークを駆使してさまざまなつながり方ができます。そこをどうデザインしていくかがいまの社会や企業が抱える課題ですね。
遠藤幹子(以下、遠藤):そこで大切なのが継続性です。オンライン/オフライン問わず、やる気のある人さえいれば立ち上げまでは比較的簡単にできます。けれど、主要メンバーが何らかの理由で離れしまうと、途端に活動の終わりを迎えることは少なくありません。モチベーションのある人というのはあくまで少数ですから。
会田:難しいですよね。モチベーションは個人に依るものですから、誰かに渡すことができない。
遠藤:やはりコミュニティをまとめていく「世話焼き係」「おせっかい係」というのは必要だと思いますね。長い目で見てそういう人たちが育っていく仕組みはできないかなと考えています。旗振り屋のスキルを伝授・移譲していかないとコミュニティは立ち行かなくなるという事実が、もっとシェアされていくといいですけどね。
会田:たとえば会社が運営する会員組織も、消費者同士がつくる会員組織も、コミュニティである以上同じ問題に直面するでしょうね。逆にここを活性化させることができたら、そこに普遍的なソリューションがあるとも言えるでしょう。収入や年齢層などセグメントできるというのは会員組織の大きなポテンシャルだと思いますね。
遠藤:以前、集合住宅の設計をしたとき、そこに子どもたちの遊び場を作ることに対して管理会社から強い反発がありました。でもデベロッパーの担当者に「旗振り屋さん」がいて「子どもが外で遊べないなんてありえない、健全に育つ環境がないとダメだ」と周囲を盛り上げていったんです。
会田:管理の都合で子どもたちの生活が制限されるのはおかしいって思った人たちが団結したわけですね。
遠藤:そうした動きが、結果的に子育て世代の家族のニーズにつながった事例もいくつかあります。たとえばプレイパークを設けたことで、そこに人が集まって自然発生的に自治活動が生まれたこともあります。
会田:権限の委譲というのがポイントだと思います。会員組織というのは企業にとって都合のいい組織だって、登録している側ですら思うわけじゃないですか。「要は顧客情報がほしいんでしょ?」みたいな。わずかなメリットとわずらわしさを天秤にかけて、その上で加入している。これから先はそこにもう一歩踏み込んでいきたいですよね。切迫した課題をみんなでシェアしたい・助け合いたいという消費者の気持ちに応えることで、有機的に横のつながりをオーガナイズできるかどうかが次世代の会員組織を考える上でキーになってきます。しかし、現状はあくまで会員組織は「他人の持ち物」になってしまっている。
遠藤:そこまで消費者の横のつながりをケアするコンテンツを企業が生み出せたら、きっと喜んで受け入れられると思います。ケアといっても1から10までサービス、というのではなく「いつか手放す」「自律させる」という子育てみたいな意識が必要かもしれません。
コミュニティ継続のカギは「惰性」にあり
遠藤:ワークショップなんかやると結構みんな受け身なんですよね。そこで重要なのが「権限譲渡のファシリテーション」です。詳しくはイベントでお話しますが、そうすることでその人のモチベーションは徐々に高まっていきます。コミュニティに働きかけていくときに、企業の担当者さんがまず担うべき役割はこれだと思いますね。
会田:惰性的に継続していくシステムっていうのも大事だと思います。僕がやっていたある手法ではうまくいって参加者が増えました。大切なのは適度な「ゆるさ」を持つことです。
遠藤:組織の運営それ自体が大変になるようではダメですよね。極端にアツい人とかルールに縛られすぎる人が登場したり、逆に参加の意義が感じられない人が増えると、みんなの気持ちに差が生まれて対立が起こります。
会田:人はどうしても頑張ることに重きを置きがちだけど、コミュニティをつくる上では必ずしも必要なことではないんです。頑張る人がいると組織はまわるけど、その権限は委譲されていかない。結果的に続かないんです。
コミュニティ運用で肝心なのは「メンバーの当事者意識」と「ルールのゆるさ」、そして「リーダーが変わっていくこと」だとおふたりは言います。多くの企業が持っている会員組織は、次世代のコミュニティ=生活基盤になりえるのでしょうか?会田さんと遠藤さんがその可能性を探ります。お仕事や地域でコミュニティづくりに関わるママやパパのご参加をお待ちしています!
〈登壇者プロフィール〉
ミュージアムエデュケーター 会田大也
山口情報芸術センター(YCAM)の教育普及担当として、2003年開館当初より11年間、メディアリテラシー教育と美術教育の領域にまたがるオリジナルワークショップや教育コンテンツの開発と実施を担当する。第6回キッズデザイン大賞受賞。
建築家/一般社団法人マザー・アーキテクチュア代表理事 遠藤幹子
大人から子どもまで「みんなが創造力を育める場づくり」をテーマに、公共文化施設や商業施設のデザインを多数手がける。2011年からは国際協力NGOジョイセフとともに、住民参加型プロジェクト「ザンビアのマタニティハウス」を実施している。