DATE 2022.02.14

子どもの作品のできばえが微妙すぎて、どこを褒めていいか分かりません!こんな時、どう声をかけるべき?【アートな子育て相談 Vol.3】

読者から寄せられたお悩みを、ミュージアムエデュケーターの会田大也さんと一緒にアートな視点から考える連載。第3回目のテーマは、子どもの作品に対する評価について。子どもの満足度とやる気をアップさせる効果的な声かけとは?
(c) Emi_Komagata /amanaimages
(c) Emi_Komagata /amanaimages

【お悩み】

6歳の娘が初めてカメラに興味を示したので、古いカメラを渡してしばらく自由に撮らせてみました。どんなものが撮れているか楽しみに見てみましたが、正直何を写したかったのか分からない微妙な写真ばかり……。同様に絵や工作も大好きなのですが、こちらの出来栄えも、お世辞にも上手とは言えません。こんな時、正直な意見を言っても良いものか悩んでしまいます。子どものやる気を損ねることなく前向きにアドバイスするためには、どんな声かけをするのが効果的ですか?(YO・6歳女の子の父)

会田

うーん、今回もリアルなお悩みですね。僕自身も、美大出身でデッサンのトレーニング経験を積んだ身なので、子どもが描いた絵に対して「もっとこうすればよくなるのに」と思ったこと、もちろんありますよ。

Fasu編集部

親は少なからず期待もしちゃいますしね。子どもの潜在的な感性が爆発して、アーティスティックな作品ができあがるんじゃないか、とかね。(笑)その分、結果に「むむむ……」と思っちゃう、と。

会田

気持ちは分かりますが……でも実際、そういう天才みたいな子はせいぜい1000人に1人くらい。だいたいの子は普通だと思っていた方が良いと思います(笑)

そもそも、写真に限らず、子どもにとっての作品って、最初はコミュニケーションの手段として作られるものなんですよ。たとえばまだ小さい子が、描いた絵をお父さんお母さんに見せてそれが何か伝わるとしますよね。そうすると、自分の描いたものが意図通りに伝わった、という体験が子どもにとっては喜びになって、繰り返し同じようなものを描くはずなんです。

Fasu編集部

なるほど、コミュニケーション!確かに、ひたすら同じ絵を描いては「見て見てー!」を繰り返していた時期、我が子にもありました。

会田

ちなみに、子どもが一番最初に描く絵は、誰もが認識しやすい「顔」の絵が多いんです。アンパンマンのような身近なキャラクターを描く場合が多いのかな。その絵を繰り返し描いて、身近な人に褒めてもらって何度も喜びを得たその先に、顔の絵が進化して胴体や手足が描き足されたり、恐竜や乗り物の絵に変わっていったりするんですね。つまり、子どもが「上手に描きたい」とか「表現したい」と思うようになるのは、自分の作品が人に伝わって、褒められる楽しさを知った次のステップです。

(c) Cavan Images /amanaimages
(c) Cavan Images /amanaimages

Fasu編集部

低年齢の子どもの創作活動で、まずは「伝わる」ということが大事なら、何を伝えたかったかに気づいてあげる必要がありますよね。ただ質問者の方のように、子どもがカメラで何を撮りたかったのか分からなかったり、絵でも「これ何を描いたんだろう?」みたいな場合には、どんな声かけをしてあげたら良いのでしょう?

会田

もちろん、まず最初に「面白いね、頑張って描いたね」といった褒め言葉はかけてあげてくださいね。その一言が、また次の作品を作るための勇気になりますから。その上で、本人に「何を描いたの?」「何を撮ろうと思ったの?」と素直に聞いてあげてください。その子なりに、褒めてほしいポイントや頑張って描いたところがきっとあるはずですから。

その本人が教えてくれた、努力したところや、描きたかったことを理解した上で作品を見れば、こちらも子どもがほしいアドバイスができるかもしれないですよね写真の場合だと「これを撮りたかったのなら、次はもっと近づいて撮ってみるのはどう?」とかね。

ただ、「上手/下手」という、大人基準での判断はしなくても良いと思います。子どもの頭の中で「上手だと褒められる」→「褒められるように上手に撮らなきゃ」といったループは、自己評価よりも他者からの評価を優先しがちなマインドを作ってしまいます。

Fasu編集部

なるほど。我が家はこれまで子どもが作品を見せてくれたときに、「これ、何を作ったんだろう?」と思いながらも、そこまで深く考えずつい何にでも「すごいね」の一言で済ませてしまっていました……。もう一歩踏み込んで聞いてあげれば、子どもの満足度もやる気も上がっていたのかも。

会田

感想コメントに困った時は、まずは正直に本人に作品の意図を聞いてみる。その意図に沿ったアドバイスをしてあげると子どもも意見を受け入れやすいはずです。あとは、「ここの色使いがとってもきれいだね」とか「細かい模様を一つ一つ丁寧に描けてるね」とか具体的に褒めてあげる。シンプルに「お母さんはここが面白いと思ったよ」も、良いですね。

 

ちなみに、コミュニケーションのために絵を描く年代を過ぎると、子どもたちは学校で先生から評価を受けたり、絵画コンクールに出品するような経験が増えますよね。そこでは、もっと多様な評価軸で作品の評価を受けることになります。

コンクールではそれぞれ評価の指標があるんですが、入賞する作品はだいたい、画用紙の端まできちんと描ききれているとか、輪郭が力強く描けているとか、そういう作品が多い。子どもって集中力が続かないから途中で飽きちゃう場合も多くて、最後までしっかり描けているということがまず大きく評価されるんです。それから「子どもらしさ」みたいな評価軸もあって、のびのび描けている、とか、自由な発想で描けているとか、そういう点も評価されます。

だけど僕がいつも思うのは、その子どもらしさって大人がイメージの中で作り上げた「子どもらしさ」なんですよね。だって、のびのび描こう、とか、子どもらしく描こう、と思って描いている子なんていないじゃないですか。

Fasu編集部

そうですね。コンクールに応募する子どもたちは、むしろ逆で「上手に描きたい」とか「大人っぽく描きたい」と思ってる子の方が多いんじゃないでしょうか。

会田

そう。でも狙って大人っぽい絵を描いたとしても、コンクールでは評価されない場合が多いんです。大人の真似をしただけの絵では審査員の大人たちのイメージの中にある「子どもらしさ」にフィットしないから。

でもどんな絵にしても、たとえコンクールの審査員には評価されなくたって、その子にとっては心の成長につながったとか、大きな価値があったりするんですよね。だから大人が下した評価だけが正解なんてことはないはずなんです。それに僕がこれまでに何百もの子どもたちの作品を見てきた中で言えるのは、絵の内容が未熟でも、発想がすごく斬新で面白かったり、全体的には未完成でもある一部分だけはとても細やかな表現をしている作品も必ずあるということです。

Fasu編集部

たくさんの子どもの絵を見てきた会田先生だからこそのご意見ですね。でも、アート作品には色んな評価軸があって、「誰かの評価が“絶対”ではないんだよ」ということは子どもに伝えたいですね。家庭内で絵を評価する場合も、親(大人)の評価軸で一方的に褒めたり批判するのも控えたいなと思いました。それよりも先ほど会田先生のアドバイスにもあったように、本人に「どこが頑張った点なのか」「どんなところを評価してほしいのか」を聞いてみて、そこに沿って褒めてあげたり色々アドバイスしてあげる方が、本人のやる気に繋がったり自己肯定感も高まりそう。

会田

そうですね。家庭内ではそういった評価や声かけでいいと思いますよ。

コンクールだって趣旨によって評価は違うし、作品を見る大人一人ひとりの価値観ごとに評価軸も違います。もちろん、子どもには子ども自身の評価軸がある。世の中には本当にさまざまな評価軸があって、どれが正しいとかは無い。だからこそ、特に質問者のお子さんのように、自分から興味を持ったことや好きなことに夢中になっている子どもたちには、「大人の評価はそんなに気にしなくていいよ」と声を大にして言ってあげたいです。上達するためには、自分自身が夢中になることが一番大事ですからね!

【今回の会田先生からのアドバイス】

■その1 子どもにとって絵はコミュニケーション!上手下手の評価よりも、その絵で何を伝えたいかに気づいてあげることが大切

 

■その2 子どもの作品を見た時は作品についてヒアリングした上で、褒め言葉・アドバイスを。大人が勝手に評価する前に、まずはその子がどこに注目してほしいかを聞いてあげて

 

■その3 世の中には多様な評価の仕方がある。評価軸に正解はないからこそ、子どもたちは大人の評価を気にせず、自分の好きなこと・夢中になっていることを楽しんで!

 

子どもにまつわる疑問やお悩みを大募集!

 

募集は終了しました。たくさんのご相談、ありがとうございました!

 

Fasuでは、読者の皆さんが会田さんに聞いてみたい、お悩みや疑問をお待ちしています!アートな視点で、子育てをもっとクリエイティブに。身近なことから将来のことまで、皆さんといっしょに考えていきます。

例えば……

「YouTubeばかり見ているのが不安。何を見せればいい?」

「我が子はお絵かきに興味が全くありません。カラフルな色鉛筆や絵の具も買い与えてみたけれど……無理強いしないほうがいい?」

「外に出て、体を動かしたり色んな遊びを体験して欲しいけど、どうやったら新しい遊びに興味を持ってもらえるでしょう?」

「会田さんおすすめの子供と行けるミュージアムが知りたい!」

などなど。

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