DATE 2022.04.07

図工の授業で描く絵のアイデアが浮かばない。「自由な発想力」ってどうやったら身につきますか?【アートな子育て相談 Vol.5】

読者から寄せられたお悩みを、ミュージアムエデュケーターの会田大也さんと一緒にアートな視点から考える連載。第5回目のテーマは、子どもの豊かな発想力やアイデアを育てるのに効果的な声かけについて。
(c) David Jakle/Image Source RF /amanaimages
(c) David Jakle/Image Source RF /amanaimages

【お悩み】

小学1年生の息子が図工で作る作品が、お友達とほとんど同じようなものばかりです。お絵描きや工作は幼いころからそれなりに好きでしたが、授業で「自由に描きましょう」と言われるとアイデアが思い浮かばずにお友達の作品や教科書に載っている作品をそのまま真似て描いてしまうようです。このまま自分で考えることが苦手になってしまわないようサポートしてあげたいのですが、子どもの自由な発想やアイデアはどう育てていけばいいのでしょうか。(MA、9歳男の子・7歳女の子の母)

会田

今回はお子さんが学校の授業で描いた作品のお悩みですね。お友達や教科書を真似てばかりで心配とのことですが、まず、授業の課題で描く絵と、自分の楽しみのためだけに描く絵って、基本的に目的が違います。学校で描く絵にオリジナリティーを求めるのって、なかなか難しいんですよね。それにそもそも、絵を描くことってほとんど何かの真似をすることと同じ。「学ぶ」の語源が「真似る」であると言われるように、絵に限らず、学習の始まりはなんでも物真似から始まります。

編集部

授業で描く絵となると、先生やお友達に見られて評価されることが前提ですからね。子どもによってはプレッシャーを感じるかもしれないし、自分の思うままに表現できないこともあるかもしれませんね。

会田

そう、これは今の学校教育の難しいところでもあるんですが……。日本の場合、公立の学校では横並びの教育が基本。特に図画工作の授業では、美術の専科でない先生が、一般的な技法や描き方を教えて、全員がその技法を取り入れて描く、というスタイルが多いですよね。そうすると、みんな標準的で同じようなレベルの作品ができあがるのは当然のことなんです。本来なら美術に標準なんて求める必要はないと思うんですけどね。結果、その標準を基準に成績をつけられて、「自分は美術が苦手なんだ」と思わされている人が多い気がして、残念に思うことがあります。

編集部

確かにその授業のスタイルだと、子どもたちの作品が似たようなものになるのは仕方ないのかも。けれど、中にはすごく個性的で斬新な絵を描いている子も何人かいたりしますよね。横並びの教育の中でもユニークなアイデアや発想力を育てていくためには、親としてどんなことができるでしょうか?

(c) azlin nur bakarudin / EyeEm /amanaimages
(c) azlin nur bakarudin / EyeEm /amanaimages

会田

でも大人って「子どもはみんな、独創的なアイデアを持っているはず!」と思いがちですが、以前もお伝えしたように、周囲が驚くような独創性を持っている子、天才的な子って、1000人に1人くらいなんですよ。だから子どもにユニークなアイデアがなくても当たり前、くらいに思った方が気楽になれる部分もあるんじゃないかなと思います。

その前提で、我が子にユニークな発想を持って欲しいなと願うなら、「他の人と違うことを考えるのは素晴らしいことだよ」と言い続けてあげることが必要じゃないでしょうか。僕自身、母親からよく言われた言葉で、人とは違っていることに価値がある、ということを信じられるようになったと思います。

編集部

なるほど、特別な訓練や準備は必要ないんですね。たくさん美術館に連れて行って脳を刺激してあげて……とか言われたらどうしようかと思っていました(笑)。声かけならいつからでも始められますし、うちでもさっそく実践してみます!

会田

ただし、褒めることって良くも悪くも大人の価値観をダイレクトに伝えること。たとえば絵の技術的な部分を褒めれば子どもは上手に描くことが素晴らしいことだと受け取るし、人と違う発想やアイデアを褒めればユニークであることが素晴らしいんだ、と素直に受け取って伸びていくはず。我が子に技術的なところを伸ばして欲しいのか、個性や独創性を大事にすることを理解してもらいたいのか……その意図によって、声かけの内容を考えていく必要がありますね。

編集部

ユニークな発想を伸ばしてあげたいのなら、その子が作った作品の中からユニークネスを見つけてあげて、そこをたくさん褒めてあげるということですね。ユニークな発想があるって、大人になって仕事をする上でも強みになりますよね。アイデアが豊富で面白い企画をポンポン考えつく人、時々出会います。

会田

そういう人って、人と違う視点を持っている人。僕自身アートの世界に身を置いていますが、突然突拍子もないようなアイデアを言う人でも、よくよく話を聞いてみると、その人なりの理論や理屈の筋が通っていて面白いんです。

いい例でいうと、岡本太郎さんという有名な芸術家がいますよね。彼は突拍子もない事を言う人の代表のように評されている側面もありますが、彼が著した『今日の芸術』という本を読んでみると、非常にロジカルであることに驚くと思いますよ。

編集部

なるほど。確かに、生まれつき超人的なひらめきを持つ“天才”ってほんの一握りで、実は自分なりの理論を重ねて、結果ユニークな発想になった天才の方が多いのかも。そう思うと質問者の方のように、現時点で子どものアイデアが乏しいからと言って今から心配しすぎる必要はないかもしれません。親御さんの声かけだったり、成長の過程で徐々にユニークな発想が身についていくだろうし、その結果大人になった時にクリエイティブな人材になれたら良いですよね。最初から我が子に独創性とか才能を期待しすぎるのは良くないなと、いま実感しました。

(c) Cavan Images /amanaimages
(c) Cavan Images /amanaimages

会田

そうですね。でも親御さんたちにひとつ知っておいてほしいのは、もしお子さんが自分のためだけに描いている自由帳やスケッチブックがあるなら、授業でお題を出されて描いた絵より、そちらの方がよほどオリジナリティーの宝庫だと思いますよ。

編集部

そう言えば我が家でも、つい最近そんなことがありました!息子がノートになんだかよく分からない絵をひたすら描き続けていて、私には絶対に見せてくれないんです。落書き程度に思っていたんですが、夜にこっそりノートを覗くと、彼が好きなゲームに登場しそうなオリジナルのキャラクターがびっしり描かれていました。キャラクターのスペックや技の名前まで細かく設定されていて、自由な発想ってこういうことなのかな、と感じたんです。

会田

それは素晴らしいですね!そういう時は、ぜひ声をかけずにやさしく見守ってあげてください。誰かに言われずとも、人知れず没頭している時こそ、大人の価値観に影響されずに自らの中にある独自性を育んでいる真っ最中ですから。

【今回の会田先生からのアドバイス】

■その1 「学ぶ」の語源が「真似る」であるように、大抵のことは真似から入るのが当たり前。最初からオリジナリティーを求めなくても大丈夫!

 

■その2 子どもの豊かな発想力を育てるには、「人と違うことは素晴らしいことだ」と言い続けてあげることが効果的。ユニークな視点を持つことの大切さを理解することで、独自のアイデアにたどり着けるはず

 

■その3 本人が大切にしている自由帳やスケッチブックこそ、オリジナリティーが生まれる世界。自発的にお絵かきに没頭していたら、邪魔をせずにそっと見守って

子どもにまつわる疑問やお悩みを大募集!

Fasuでは、読者の皆さんが会田さんに聞いてみたい、お悩みや疑問をお待ちしています!アートな視点で、子育てをもっとクリエイティブに。身近なことから将来のことまで、皆さんといっしょに考えていきます。

例えば……

「YouTubeばかり見ているのが不安。何を見せればいい?」

「我が子はお絵かきに興味が全くありません。カラフルな色鉛筆や絵の具も買い与えてみたけれど……無理強いしないほうがいい?」

「外に出て、体を動かしたり色んな遊びを体験して欲しいけど、どうやったら新しい遊びに興味を持ってもらえるでしょう?」

「会田さんおすすめの子供と行けるミュージアムが知りたい!」

などなど。

 

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