DATE 2022.03.09

習い事は好きだけど練習が嫌い。“やる気がないならやめなさい!”と親が言う前にできることはありますか?【アートな子育て相談 Vol.4】

読者から寄せられたお悩みを、ミュージアムエデュケーターの会田大也さんと一緒にアートな視点から考える連載。第4回目のテーマは、子どもの習い事について。楽しむ気持ちをキープしたまま、子どものやる気を引き出す方法は? 
(c) Aliyev Alexei Sergeevich/Image Source RF /amanaimages
(c) Aliyev Alexei Sergeevich/Image Source RF /amanaimages

【お悩み】

バイオリンを習い始めて1年になる小学5年生の息子。本人の希望で始めたのですが、練習する習慣がなかなか身につきません。毎日10分だけでもやった方がいいよと提案するのですが、なかなか自ら取り組もうとはせず、週に一度のレッスン前後に少し練習するだけです。子どもが好きだといっても練習や努力をしない場合は、本当に好きではないのでしょうか? 子どもの好きという気持ちをもっと引き出して熱中できるようにするために、親はどんな声かけをしたら良いでしょうか?(EA・11歳男の子の母)

会田

今回は習い事に関するお悩みです。最近は習い事の種類も教室の数も本当に多くて、悩みもさまざまですよね。

Fasu編集部

今回のケースは、子どもが本人の意志で始めたいと言った習い事なのに、練習が習慣化せずやる気があるように見えない、と。楽器やダンスなど、レッスン以外での自主練習が必要な習い事だと、練習の部分はどうしても親が見てあげる必要がありますからね。放っておいても自分から練習する子なんて、いるんだろうか……。

会田

何も言わなくても一生懸命練習する子は、その習い事に夢中になっている証拠。今回のお子さんは、バイオリンも好きなんだろうけど、今はまだバイオリン以上に時間を割きたいと思える他の好きなことがあるのかもしれないですね。

Fasu編集部

確かに好きは好きだけど、1番ではない、という可能性はありますね。興味や憧れの気持ちがあってはじめてみたものの、当然基礎練習は地味だし、すんなり弾けるほど簡単でもないし、上達のためにはコツコツ反復練習が必要だし……。結果、「思っていたのと違う!」と感じているのかも。でも1番でなくとも、折角好きだと思える気持ちがあるのなら大事に育ててあげたいですよね。お子さんの中にある「好き」な気持ちをもっと引き出して練習にも熱中させるには、どんな方法があると思いますか?

会田

少し実践的なアドバイスですが、もしバイオリン以外に好きなことがあるのなら、その1番好きなことや今興味のあることに絡めて、練習を促してみても良いかもしれないですよ。例えばお子さんがYoutuberに憧れていて、動画編集が1番好きなことだったとしますよね。それなら「今度作る動画のBGMは、あなたがバイオリンで弾いた曲を録音してつけてみたら?」と提案してみるとか。そんな風に好きなこと同士を組み合わせてみると、本人も自発的に練習しだすかも。

Fasu編集部

いいアイデアですね。1番好きなことのために習い事のスキルが役立つなら、練習も頑張れそう!

会田

そういった工夫ひとつで、子どものやる気がアップする可能性は十分にあると思います。
あと習い事に関しては、本人のやる気がどこにあるのか、なぜその習い事を始めたいと思ったのか、そのきっかけとなった原点が大事だと思うんです。例えば、ダンスなんかは人気の習い事ですけど、「煌びやかな衣装に憧れて始めた」という子も多いですよね。でもそういう子にとってその習い事の1番の楽しさって、「舞台上で衣装を着て踊ること」。だから普段、練習着を着て地味に練習するっていうのは、本人的には気持ちが高まるシチュエーションではない訳です。

大人は「練習だって本番だって踊る楽しさは変わらないのに」とか「地道に練習して技術を磨いて、その上で舞台での達成感があって……」と思うけど、その子にとっては「華やかな衣装を着て大舞台に立ってこそ楽しいのに、家で練習のために踊るのじゃつまらない!」と、やる気が出ないのかもしれない。

Fasu編集部

ま、まさにうちの子がそうです……。娘はバレエを習っているんですが、同じく自分から練習しなくて。「そんなに練習が嫌だったらやめてもいいんだよ?」と言うんですけど、それは嫌だ、と断固拒否。でも普段は練習を渋るくせに、いざ発表会に出たら「可愛い衣装を着て踊れて楽しかった!」と満足そうで。そんなに楽しかったなら、練習をもっと頑張ったら上手に踊れてさらに楽しいだろうに……とモヤモヤしたり(笑)

会田

もしかしたらお嬢さんにとって一番大切なのはキラキラした衣装を着ることで、本当はバレエがやりたいわけじゃない、ということもありえますよね。バレエじゃない種類のダンスでも、華やかな衣裳が着れたら楽しいのかもしれない。

子どものやる気を引き出したいのなら、「この子はなぜこの習い事がやりたいのか」「この子にとってこの習い事はどんな存在で、どんなところが楽しいのか?」と、子どもの視点に立って気持ちや意図に気づくことが大事だと思うんです

Fasu編集部

確かに本人がどんな気持ちで習い事に取り組んでいるのかよりも、「お金も払っているんだし、練習を頑張って上達してほしい」という親目線の望みに気を取られている人は多そうですね。私も含めですが……(汗)。

会田

習い事って色々とお金がかかることなので、どうしても親としては「上達」という結果を求めがちですよね。そしてそのためには練習(努力)が必要だと。でも子どもにとっては、上達できていなくても楽しいと感じていることがあるかもしれない。可愛い衣装を着れるとか、先生の話がいつも面白いとか、仲間と一緒に何かをするのが楽しいとかね。そういった子どもの真意を理解して応援してあげる方が、習い事に対してやる気も出るし継続もすると思います。

(c) Cavan Images /amanaimages
(c) Cavan Images /amanaimages

Fasu編集部

大人から見たら「練習も上達もしないし、無駄な習い事かな」と思ってしまうかもしれないけど、お子さん本人が楽しいと思えている間は続ける価値はあるのかもしれませんね。

会田

そうですね。僕は、習い事は「楽しい」と思っている状態をキープできているかどうかが大事だと思います。上達することはもちろん一つの指標だけど、そこばかり重視してしまうと、純粋に好きで始めたことがだんだん喜びに感じられなくなってしまうんじゃないかな、と少しもったいなく感じるんです。習い事を通して何を目指すかにもよりますが、本人が楽しいと思っているうちは続けていて良いと思います。

Fasu編集部

会田さんご自身は、習い事の思い出って何かありますか?

会田

実は、うちは親が体育会系で、継続は力なり!努力を続ければ必ず結果が出るぞ、と言うような今の僕とは全く違う教えだったんです。嫌だと言ってやめさせてもらえる訳でもなく、結構苦い思い出、ありますね。小さい頃から本格的にスキーを習っていたんですが、当時は楽しいなんて思わなくて、検定の合格とか技の習得とか、ただ決められた目標をクリアするためにやっていた気がします。でも、大人になってレジャーとしてスキーに行くようになって初めて、普通に楽しく滑るということがあり得るんだ、と気付いたんですよ。

Fasu編集部

分かる気がします。私は長年ピアノを習っていましたが、音大なんて行きたくないのに、親も先生も「目指すは音大!」と勝手に意気込んで厳しいレッスン続きで。本当に嫌になって高校生の時に辞めてしまいましたが、子どもが生まれてから、我が子のために久しぶりに弾いてみたんです。そしたら凄く喜んでくれて。その時になって初めて、ピアノを習っていて良かったなと思いましたね。

会田

そう、やっぱり自分が喜びを感じられるからこそ、楽しいと思えるんですよね。お子さんが習い事の中でその喜びに自分で気づけるといいですけど、大人に「結果」や「上達」ばかりを求められて、無理強いさせられていると気づけなくなるんじゃないかな。

だからこそ、先ほども言いましたが、本人がどんな気持ちで取り組んでいるのかを確かめる、尊重してあげる。そして習い事のゴールは、親が勝手に決めるのではなく、その子自身が見つけるということが大切じゃないでしょうか。自分自身で習い事の楽しみや喜びを見つけられたら、子どもは厳しい環境でも我慢できるし、自分から努力もできると思いますよ。

Fasu編集部

習い事の継続やモチベーションアップのためには、何よりコドモ視点に立って寄り添うことが大事ですね。

(c) Mint Images /amanaimages
(c) Mint Images /amanaimages

会田

最後にモチベーションアップのためのちょっとしたアドバイスですけど、YouTubeでその習い事に関する動画を見るのも良いんじゃないでしょうか。YouTubeってもちろん素人動画もありますけど、世界のトップアーティストやアスリートなどの動画も同時に溢れています。子どもにYouTubeを見せるのを嫌う人もいるとは思いますが、特にいま、コロナ時代で生(リアル)の体験ができない中で、現地に行けなくともトップレベルの人たちのプレイを気軽に観れるってラッキーなことだと思うんです。

特に学びたての時って誰しも、「できるようになりたい」「上達したい」とモチベーションが高いですよね。そういう状態の時に、世界のトップたちの動画に触れることで、やる気の火がさらにつくんじゃないかな。

Fasu編集部

確かに良い刺激になりそうですね。 一流の技術をYouTubeで気軽に見られることは今の時代ならではの利点ですから、そういう工夫も取り入れて、習い事を楽しく続けられると良いですね!

【今回の会田先生からのアドバイス】

■その1 習い事以外にもっと好きなことがあるのなら、その好きなことや興味のあることと絡めた練習を促してみて。練習が自分の好きなことに役立つと分かれば、上達も早いはず!

 

■その2 本人がなぜその習い事をやりたいのか、どんなところに惹かれているのか、まずは本人の気持ちを確かめよう。その子のやる気の源に寄り添って応援をしてあげれば、子どもの「好き」という気持ちも自然と高まっていくはず

 

■その3 「上達」や「努力」の強要は、子どもを苦しめる可能性も。親が習い事のゴールを決めるのではなく、その子自身が喜びや楽しさを見つけて、ゴールを決めることが大切

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